西 郷「最近,特に冷えるなぁ。こういう時は,やっぱりおでんに熱燗だな。大久保どん。ご機嫌いかが?」
大久保「どうもこもないわ。」
西 郷「おっ,今度はおまえがそのセリフか。おまえが不機嫌だと,少し気にはなるけど,悪趣味だが少し嬉しい気もする(笑)。一体どうしたぃ。」
大久保「まぁ,本気で怒ることじゃないかもしれんが,最近民放のテレビで,『大食い大会』や『全30メニュー完食ツアー』みたいな番組が流されとるが,ああいう番組を目にすると,不機嫌になるのよ。すぐにチャンネル変えちゃう。」
西 郷「確かにおまえは大食漢じゃないが,どうしてだ。」
大久保「ああいう番組では,フードファイターとかタレントが最後は苦痛に顔をゆがめながら食べとるだろう。俺がチャンネルを変える理由は2つある。貧乏育ちの俺は,食べ物というのは『おいしい。おいしい。』といいながら,味わっていただくものだという気持ちがあるからだ。嫌々無理に胃袋に押し込むものではない。もうひとつは,フードファイターらの人間離れした食べっぷりは半端じゃない。見ていて自分の胃まではち切れそうで気分が悪くなるからなんじゃ。」
西 郷「確かにな。食べ物だって,あんなに苦痛に顔をゆがめながら食べられるために生まれてきたんじゃないだろう。浮かばれんわなぁ・・・。」
大久保「大食漢のおまえも賛同してくれるか。世界中には飢餓で亡くなる人も大勢いるし,この日本国にだって腹すかしている子供もいると思う。あんな番組の企画はしょせん一過性のものだと思っとったが,結構ひんぱんに目にする。あれで視聴率がとれているのかな。ああいう企画は俺にはどうしても理解できん。」
西 郷「大久保どん。食べ物というのは『おいしい。おいしい。』といいながら,味わっていただくものだというのは,その通りだ。俺は,この,おでんのたまごが大好物でな。ほれ,・・・・こうやって箸で半分に割るだろう。そうすると,黄身が少しくずれるから,それをまず味見する。・・・・そして,半分を頬張って,・・・それから,おでんのつゆを少しいただく・・・。この黄身と白身とつゆのコラボレーション!俺の至福の時なのよ。ところで,大久保どんの至福の時はどうよ?」
大久保「俺か?おれは,ほれ,この串に刺したうずらの卵のフライをな・・・こうやってソースにどっぷり付けて,・・・そして,いったん皿の上に横たえるだろ。・・・・・そこで,ほれ,千切りのキャベツをフライの衣の上にまんべんなくタップリのせるだろ。・・・そして,こうやってうずらちゃんの卵を一個ずつ頬張るのよ。卵と,サクサクの衣とサクサクのキャベツのハーモニー,いやアンサンブルといってもいいかな。これが俺の至福の時よ。」
西 郷「そうか,結局お互い卵好きのコレステロール仲間か・・・・・」