大学時代に熱中した音楽のジャンルは,クラシック音楽,ビートルズの他に,シャンソンであった。当時の法学部の定員は160名で,第二外国語の選択でクラス分けがされ,約3分の2がドイツ語選択,残りのほとんどがフランス語選択だった。シャンソンに興味を示したのも僕がフランス語選択だったからかもしれない。ただ,その直接のきっかけとなったのは,テレビでシャンソン歌手のジュリエット・グレコ特集を見て感動したことだった。
グレコは黒の衣装と,女性としては独特の低音の声が魅力的で,何よりもシャンソンが,歌詞,メロディー,身振り・手振り,表情などを要素とした極めて深みのある音楽ジャンルだと知った。その当時最初に手にしたグレコのレコードは,シャンソンの名曲集で,魅力溢れるものだった。「枯葉」,「パリの空の下」,「ロマンス」,「ラ・メール」,「詩人の魂」,「聞かせてよ愛の言葉を」,「ムーラン・ルージュの歌」,「懐かしきフランス」,「パリ野郎」,「後には何もない」,「アコーデオン」などだ。これでシャンソンに熱中しない訳はない。
さらに,大学生協のレコード等の購買部にはシャンソン分野も非常に充実していて,しかも廉価で購入できたことも有り難かった。シャルル・トレネやエディット・ピアフ,さらには何とダミアの「暗い日曜日」なども聴いていた。
さて,特に好きだったグレコに話を戻すが,後年,僕が社会人になった後,コンサートで本物のグレコのシャンソンを聴く機会に恵まれたのだ。名古屋の池下にあった厚生年金会館でのライブである。その晩はレコードで聴いていたシャンソンの名曲も聴くことができたし,その後のグレコの持ち歌も堪能できた幸せな晩だった。会場は満席に近く,名古屋においても幅広いファン層がいたのだ。今でもグレコの名曲集のCDを聴きながら,熱中していた当時に思いをはせることがある。