西 郷「はっ,はっ,はっ。毎年桜の季節になるとさ,この『のれそれ』を三杯酢で食べられるのが幸せでさ。美味しいなぁ,いいな日本は。野球も強いしな!」
大久保「うん。確かにこれは旨いな・・・。それに,野球もな・・・。」
西 郷「あれっ?お前,いわゆる不機嫌ってやつか?どうした。」
大久保「どうもこもないわ。そのとおり,いわゆる不機嫌ってやつよ。」
西 郷「お前,せっかくの,しかも旬の『のれそれ』に失礼だぞ!いったいどうしたんだ。」
大久保「この前,行きつけの床屋さんに行ったのよ。そこの理容師さんが言うのに,その人の自宅がある学区の中学校じゃ,授業そのものが成立していないクラスがかなりあるというじゃないか。この日本がこれからどうなってしまうのか,落ち込んでしまったわ。」
西 郷「・・・・・・・・。何?・・・・・せ,成立?・・・授業に成立,不成立なんていう概念があるのか?授業っていうのは,チャイムが鳴ったら先生が学問を教えて,生徒がその話をちゃんと聞いて,質問や回答をしながら,そしてとんちんかんな回答や優等生の回答をみんなで共有しながら,それこそみんなが成長していく場だろう。俺なんか,中学生のとき,everydayを『エヴリデイ』じゃなくて『エベリデイ』と発音して,クラスのみんなから1か月くらいは『エベリデイ』と茶化されたわ。その代わり俺も,これに奮起した。顔に似合わず英語の成績がトップクラスになったって訳よ。」
大久保「そうだよ。本来はそうだ。オレたちが子供のころはそうだった。と,ところがだ。その中学校では,先生が話し始めても大声しゃべっている奴はおるわ。走り回る奴はおるわ。その状況に先生は注意もせず,黙々と小声で学習指導要領にしたがった内容を読むだけで,授業にならんそうな・・・・。」
西 郷「・・・・。えーっ?・・・。日本の中学校がその有様だと?・・・・えーっ・・・・無秩序状態ではないか・・・・(泣く)。」
大久保「・・・。たまたま,オレも最近ある新聞の子供のコーナーを読んでいたら,ある子供の悩み相談があって,『自分は勉強したいのに,教室が騒がしくて,先生は騒がしい生徒を注意するのが精一杯で,とても勉強できる環境ではありません。どうしたらいいんでしょうか?」という投書があったんだ。オレはそれを読んで,・・・それを読んで,・・・(泣く)。」
西 郷「おいおい。お前まで泣くんかい。お互い年のせいか,涙もろくなったなぁ・・・。ちょっと感情失禁気味だよな。提案だが,俺たちで『全日本感情失禁協会』という名前のNPO法人でも作ろうか。」
大久保「アホ抜かせ!オレは本当に国を憂いておるんだ!」
西 郷「大久保,憂国の士よ!じゃあ,どうしたらいいと思う?」
大久保「はっきり言って,教育の現場がそうなるのは,淵源をたどると実は家庭教育の問題だと思っとるんじゃ。人がちゃんと話しているのに,それを静かに聞けないというメンタリティーを醸成してしまったのは,要するに親の躾の不十分さよ。『自分がされて嫌なことは人にしない。』という最低限のモラルが家庭で生成されていない訳よ。」
西 郷「そっから先は俺に言わせろ。」
大久保「いや,オレが言う!」
西 郷「いや,俺が言う。教育は国家百年の大計だ。急がば回れだ。実は,家庭教育,躾ができない親は,もう残念ながら出来上がってしまっている。もう今さら彼らには期待できない。これからは,ちゃんとした家庭教育,躾ができる『将来の親』を育成していけば良いのだ。長い目で見れば,やはり五十年から百年はかかるだろう。しかし,五十年から百年かかっても立て直せるのであれば,何のその!それには,先ほどの趣旨と一見矛盾するようだが,やはり学校教育の立て直しだ。一生懸命やっている教師もいるが,そうでない教師の質を高める必要がある。教師も勇気を出す必要がある。勇気を出せる教師を育成する必要があるし,そういった教師が生き生きと活躍できる場を作る必要がある。そして,授業が成立していない有様を放置するような組織でもだめだ。学校をあげて,少なくとも『成立しない授業』なるものをなくす努力と協力をしなければならない。教育機関をちゃんとしたものにすることによって,とにかく家庭で躾というものをすることができる『将来の親』を養成していくんだ!」
大久保「何年か前に辞めた元首相。確か彼の先祖は長州藩出身ではないかと思うが,一部のマスコミから相当に叩かれておった。でも,彼の肝いりで活動していた教育再生会議。これが目指していたものは,方向性としては良かったと思っているんだ。」
西 郷「うん。それにしても,授業が成立していないクラスは,まずは秩序というものを取り戻さんかい!ひとが話をしている時は黙って聞く,耳を傾けるという最低限のことはしなけりゃならんし,させなきゃならん。」
大久保「うん。それで行こう・・・・・・・。まぁ,オレたちは『エベリデイ』居酒屋で飲んでばかりだがな。」
西 郷「・・・・・・・・・・・・・・・・」