今年11月の本番に向けて,バッハ「マタイ受難曲」の合唱練習に通っている。前にも述べたと思うけど,毎週火曜日の夜,これに加えて週によっては金曜日の夜も練習があるし,月に最低一度は日曜練習もある。
先週金曜日の夜の練習では,3曲ほどの練習を行ったが,終曲の1つ前のレチタティーヴォ中の4声の合唱部分の練習をしている際に,感動して思わず目頭が熱くなってしまった。
Mein Jesu gute Nacht!
私のイエスよ,おやすみなさい!
この部分はこれだけの歌詞だが,4声の各パートが,フレーズごとにメロディーを先導していくのである。最初のフレーズではソプラノ,その次はアルト,その次はわがバス,最後はテノールといった風に。その和声の例えようもなく美しいこと・・・。こういうすごい曲をどうしたら作れるのだろう。どうしたらこのような美しいメロディーが浮かぶのであろうか。自分で歌っていて感動してしまうのだから世話はない。ヨハン・セバスティアン・バッハ・・・。バッハは僅か9歳の時に母を,そして10歳の時に父を亡くし,その後は自活できるまで兄に引き取られて生活した。経済的には恵まれず,したがって誰かに師事して作曲技法を本格的に学ぶ機会があったとは思われないのに,そのような逆境にもかかわず貪欲に知識を吸収し,その天才を開花させた。「音楽の父」と呼ばれるまでになった。そして,聴く者の魂を揺さぶるようなその音楽の素晴らしさ。本当にこの人は・・・・・。
「マタイ受難曲」の練習は,何しろ一日の仕事が終わった後に始まる。正直言って,今日は休みたいなと思う日もあり,実際に仕事で参加できない日もあった。でも,この宗教音楽の最高峰とも,人類の至宝とも評価される「マタイ受難曲」演奏の一翼を担うことができるのだ。ずぶの素人である僕が,この先繰り返しそういう経験ができるとも思えない。極めて貴重な体験であるし,実際に練習に参加していて目頭が熱くなるほど感動してしまう曲である。今は,こういう貴重な体験ができることに感謝し,できるだけ練習に参加したいとすら思えるのである。そして今日も練習日。