連休中に,以前から欲しかったバッハのDVDを銀座の山野楽器で買ってきた。そのDVDの中に,ジャック・ルーシェというピアニストの発言場面があった。「あれっ,この人,ひょっとしてバッハをジャズ風にアレンジした人じゃないか?」と直感したら,やはりそのとおりだった。そうなんです,若い人は知っているかどうか知りませんが(笑),今から50年ほども前に「プレイ・バッハ」というタイトルでバッハの名曲をジャズ風にアレンジした録音をし,世界的に有名になった人だったのです。
実は,「プレイ・バッハ」というレコードがあったことは,大学時代には知っていたけど,その当時の僕は,あの神聖なJ.Sバッハの曲をジャズ風にアレンジするなんて,とあまり快くは思っていなかったんです。了見が狭いね・・・(笑)。でも,さっきのDVDでのジャック・ルーシェの発言や実演の場面を見ていたら,非常に興味がわいてきて,「ザ・ベスト・オブ・プレイバッハ」というCDを手に入れ,早速聴いてみた。
こ,これはすごいわー。ぜんまいざむらいのなめざえもん風に言えば,「これはすごいでやんす。」となるし,豆丸風に言えば,「こ,これはすごいでござる。」となり,わたあめひめ風に言えば,「これはすごいでごじゃりまするー。」となる。ジャック・ルーシェは,見事なまでにバッハのジャズ風小宇宙を形成してみせたのである。手に入れたCDでは,平均律クラヴィーア曲集のいくつかの前奏曲とフーガ,無伴奏チェロ組曲第1番の前奏曲,G線上のアリア,「主よ,人の望みの喜びよ」,「目覚めよと呼ぶ声あり」,イタリア協奏曲などを,本当に見事なまでにジャズ風にアレンジし,演奏していた。ジャック・ルーシェという人は心の底からバッハが好きなのだなと確信したし,結局,音楽のジャンルを問わずバッハの普遍性も再認識できた。バッハはやっぱり現代に至るまでの音楽の原点だねぇ。
「プレイ・バッハ」で一世を風靡したそのジャック・ルーシェも,今年の10月26日でもう満75歳。月日が経つのは早い。彼は自分が好きだったピアニストとして,30代そこそこで鬼籍に入ったディヌ・リパッティを挙げている。僕も大学生時代,ディヌ・リパッティのショパン「ワルツ集」を愛聴していた。ジャック・ルーシェのこともますます好きになった。