夏だから当たり前だろ,とはいうものの,暑い・・・。涼しい季節ならば,どっかりと腰を落ち着けてブルックナーの交響曲などを味わいたいところだが,ここまで暑いとなるとそういう曲には食指が伸びない。どうしてもピアノの音を求めるようになる。
そういう訳で,久しぶりにショパンのワルツ集を聴いてみた。夭折した天才ピアニストのディヌ・リパッティの演奏である。小学生の時もいいなあと思っていたのだが,あらためてショパンのワルツを聴いてみると,少しは暑さがやわらぐ気がする。
さて,ショパンのワルツは,生前発表されたものとそうでないものを含めて全部で19曲あるようだ。ショパンのワルツはというと,昔から特に好きなのは,第7番嬰ハ短調(作品64の2)と第3番イ短調(作品34の2)の2曲だ。好きさかげんでいうと,この2曲は他のワルツをかなり引き離している感じである。
まず第7番のワルツを聴いていると,やはりショパンのポーランド人としての魂を感じる。ポーランドの民族舞曲マズルカとは異なるが,マズルカ風のワルツと表現してもよいだろう。僕のピアノ技術は拙劣だが,我が身をかえりみずに何とかワルツにチャレンジしてみようと最初に思ったのがこの曲である。それくらいこの曲に憧れていたのである。今でもつっかえつっかえだが,何とかこの曲は最後までたどりつける。本当に佳い曲だと思う。
次に第3番のワルツもとてもいい。小学生の頃,最初にこの曲を聴いた時はなんて暗い曲なんだろうと思ったが,これも魅力的だ。今度時間を見つけて,この曲にもチャレンジしたいと思う。何しろイ短調で,ト音記号の後には♯も♭もないから僕にも弾きやすい。恐らくであるが,この曲はショパンのワルツの中でもテクニック的には最も楽なのではないかと思う。でも味わい深い曲である。
こうしてみてくると僕の場合,ショパンのワルツの中では,短調(マイナー)の方を好み,舞踏用ではなく,憂鬱,不安,諦めなどの内面,心情を吐露したような作品の方に魅力を感じているようである。