「マタイ受難曲」の本番もいよいよ1か月後に迫ってきた。何だか落ち着かなくなってきたし,今まで全くしたこともない黒の蝶ネクタイも購入しなければならない。そういうのはどこで売ってるんだろう。
本番に備えての合唱練習は今日の夜もあるが,自宅でもDVDとスコア(総譜)を見ながらの練習を始めた(そういうときはもちろん酒は飲んでいない)。その「マタイ受難曲」のDVDというのは,平成12,3年ころ,僕がある番組で録画したもので,ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団,聖トーマス教会合唱団,指揮はトーマスカントル(同教会の音楽監督)のゲオルグ・クリストフ・ビラーのものである。すごく佳い演奏であり,何度聴いても感動する。実はこのDVDを録画して繰り返し鑑賞するようになってから,この演奏者の組み合わせによる「マタイ受難曲」の演奏が,名古屋で二度あった。昨年の3月とその3年ほど前の3月だった。そのコンサートにはもちろん行き,感動を新たにしたものである。僕が録画したそのDVDも,その後の名古屋での二度の公演も,エヴァンゲリスト(福音史家)はマルティン・ペツォルトであった。「マタイ受難曲」第一部の20番目の美しいテノールのアリアは,歌う人にとっては確かに難易度が高いと思うのだが,ペツォルトの歌い振りは失礼ながら一杯一杯という感じ。ホルスト・ラウベンタールやペーター・シュライヤーが余裕をもって歌っているのと比較すればね。でも何かしら憎めない人である。ある本でカンタータに関するマルティン・ペツォルトの論文を読んだことがあるが,この人はもともと立派な研究者のようである。
それにしても,ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏はいつ聴いても素晴らしい。歴史の深みと伝統の重みを感じる。創立が1743年だからバッハの晩年のころである。名前の由来は,「ゲヴァントハウス」(織物の見本市会場として使われていた建物)を演奏の本拠地にしていたからだという。この管弦楽団を,あのメンデルスゾーンが率いていた時期もある(ちなみに今年はメンデルスゾーン生誕200年)。もう一度名古屋に来ないかな。このライプツィヒは,あのバッハが約27年間生活しその終焉の地となった街だ。ぜひとも一度は訪ねてみたい街である。