スーツの上着を着たまま歩いていても,もうそれほど暑くはなく,木々の葉も黄色くなり始めた。こういう季節になると,何となくではあるがラフマニノフの曲が聴きたくなるのである。昔から。春や夏にはそういう風には思わないのだけれど,秋や冬は何となくラフマニノフの曲が恋しくなる。
久しぶりに聴いてみたが,やはり佳い。この季節にもピッタリである。ラフマニノフの曲で好きなものを思いつくままに挙げていくと,まずは何よりもピアノ協奏曲の第3番と第2番。それから交響曲の第2番と第3番。前奏曲の中では何故かト短調のやつが中学生の頃からとても印象に残っている。今朝も前奏曲ト短調を聴いてきたのだが,どことなくショパンのポロネーズ第5番嬰ヘ短調(作品44)に感じが非常に似ている。昔からそのように思っていた。それとラフマニノフの中ではヴォカリーズのメロディーが好きである。交響曲第2番の第2楽章といい,このヴォカリーズといい,ラフマニノフは無類のメロディーメーカーである。あとは,これも有名な曲だが,パガニーニの主題による狂詩曲の第18変奏がいい。
前にもこのブログで書いたことがあるが,ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番ではとっておきの,お気に入りのCDがある。20世紀屈指の名ピアニストであったヴラディーミル・ホロヴィッツと名指揮者ユージン・オーマンディー(ニューヨーク・フィル)とが競演したカーネギーホールでのライブ録音である。演奏終了直後の熱狂的な拍手で,こちらも思わず興奮する。素人が聴いてもこのピアノ演奏には超絶技巧が必要なのではないかと思うが,ホロヴィッツは難なくこれをこなしている感じである。でも,ラフマニノフがこの曲を作ったのだし,自演したであろうから,ラフマニノフ自身も相当なテクニックをもった超一流のピアニストだったのであろう。