何やら小難しそうな標題(タイトル)にしてしまったが,何のことはない,「ぜんまいざむらい」に登場するキャラクターにはそれぞれ長所や短所があり,絶対善をひけらかす人も絶対悪の権化もそれぞれいない,とても心地よい世界になっているということが言いたいだけなのだ。
ぼくは主人公のぜんまいざむらい(以下「ぜんまい殿」という。)がとても好きである。ウィキペディアにも書いてあるとおり,ぜんまい殿は「現NHKで最も平和的な主人公の一人」であって,心に安らぎを与えてくれる。彼は不正や困った人・状態を目の当たりにしたときは,「必笑だんご剣」でこれらを正したり,自己犠牲精神を発揮するけれども,バリバリの勧善懲悪というものでもない。このぜんまい殿だって,何かの拍子に電撃を浴びたりすると「アクタレざむらい」になったりもするし,何しろ前世(約200年前)では,だんごを盗もうとしてねずみに会ってこれに驚き,井戸に落ちて死んでしまったという経歴がある。
豆丸だって,すごく真面目で良い子だけど,おねしょの癖という弱点がある。
だんごやおばばだって,毎日毎日だんごを作って生業に精を出す本当に真面目な町人だし,何よりもぜんまい殿や豆丸を居候させているという意味で,根が優しいのだろう。でも,あの随所に出てくる悩殺ポーズはいただけない。
なめざえもんは,お金にものを言わせて傍若無人の振る舞いをしたり,貧乏人を小馬鹿にしたりする鼻持ちならない奴だけれど,ぜんまい殿が絶体絶命の時は真剣に助けようとするし,涙を流したりする善良で優しい面もある。
あくとり代官だって,あのダジャレの連発にはとても閉口するが,考え方はすごく真っ当だし,例えばある回のお話では,他の料理人と料理大会で順位を争った際には,他の料理人の悪質な妨害にもめげずにフェアに振る舞って堂々と優勝し,この僕をして涙ぐませている。
「・・・・・でごじゃりまする。」のわたあめひめも,人のため息を棒で巻いてわたあめにし,そのため息をした人の疲労感や不安感を取り除いてくれる良い女の子である。わたあめひめはその一方で,性格的に思いこみが激しく,ワガママな面もある。
このように,「ぜんまいざむらい」に登場するキャラクターは,ごく一部の例外を除いて,みんな長所と短所を併せ持っていて,絶対善をひけらかす人も絶対悪の権化もそれぞれいない。居心地のよい世界になっている。これこそが絶対に正しいのだという押しつけや,徹底した勧善懲悪でもないので,肩がこらない。正邪,善悪などの区別が峻厳ではなく,いわば価値が相対化され,神々が共存している感じである。
さきほどごく一部の例外を除いて,と述べたが,かみちよねーさんだけは短所らしきものが全く見当たらず,僕は非常に好きなのである(♡)。