民主党幹事長小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件は,国民に多くの疑惑を生じさせている。いや,普通に批判能力のある国民は疑惑の目を向けてしかるべきである。平成22年1月25日の読売新聞朝刊(くどいようですが,巨人ファンなんです)の記事は,この問題に関する疑惑の内容を要領よくまとめていた。その記事を要約すると・・・
陸山会が平成16年10月29日に東京都世田谷区の不動産を購入した原資について,小沢氏の説明では,①父親(小沢佐重喜氏)から相続した湯島の自宅を売却して現在の自宅を購入した残りの2億円,②家族名義の銀行(信託)口座から平成9年に引き出した3億円,③やはり家族名義の銀行(信託)口座から平成14年に引き出した6000万円だという。しかし,このような説明には,次のような疑問がある。
① 家族名義で銀行に預けていたという3億6000万円について,これが小沢氏の個人資産だというなら,何故家族名義にしていたのか。
② もしこの3億6000万円がその「名義」どおり,家族に贈与していたとするならば,贈与税支払義務が生じ,贈与された家族は贈与税を支払わなければならなかったはずである。
③ 小沢氏は,このように家族名義にしていた理由について,「(自分の身に)万が一何かあった時のために分けておいた」と説明しているというが,その一方で,小沢氏は家族名義の口座から引き出した現金を,元赤坂にある小沢氏の個人事務所の金庫に保管したと説明しており,自身に何かあった時のために家族に贈与した資金を再び自分の事務所に保管するというのは不自然である。
④ また,これらの資金が家族に贈与したものではなく,小沢氏自身の金を家族の名義だけを借りて銀行に積み立てていたとしても疑問が残る。なぜならば,小沢氏の資産報告書ではこれまで「預金・貯金・郵便貯金・金銭信託」(普通預金などを除く)の項目はいずれも「該当なし」と記載されていた。
この新聞記事が要領よくまとめた疑惑の内容は以上のとおりである。正にそのとおりである。それにしても,自分の身に万が一のことがあった時のために3億6000万円もの多額の金銭を家族名義にしていたというが,普通に考えれば「万が一」というのは死亡のことであろう。死亡すれば相続が開始する訳で,これらの金銭は何もしなくても愛する家族が相続分に応じて相続することになる。説明としてピンとこないのである。いやーそうすれば多額の相続税がかかってしまうではないか,という反論に対しては,じゃあー,来るべき相続と相続税の支払を免れるために(脱税)家族名義にしていたのですか,しかも贈与税の支払も免れて,という再反論も成り立つ。いずれにしても,先日の小沢氏の記者会見における説明で疑惑は晴れたとご本人が思っているのであろうか。もしそうだとすれば,底抜けの楽天家か,度し難い確信犯であろう。
あれあれ,今朝の毎日新聞にもすごいことが書かれている。それによると,陸山会の口座をめぐって平成16年12月から17年5月にかけて総額約13億円の出し入れの事実が存在するのに,政治資金収支報告書に記載されていないことが明らかになっている。その大金のやり取りは,小沢氏が実質的に運営する政治団体「改革フォーラム21」との間でのやり取りのようだ。しかも,この「改革フォーラム21」の口座には,さきほどの約13億円の資金移動に先立つ平成16年10月に,約15億円が現金で入金されていたにもかかわらず,そのことも収支報告書に記載されていない。さらに,その2年前の平成14年,当時小沢氏が党首だった自由党から,同党幹事長だった藤井裕久前財務大臣に15億円余の政党交付金が「組織対策費」として支出され,使途が分からないままになっているが,この資金が入金された可能性も指摘されている。藤井前財務相の辞任は本当に健康問題だけの理由だったのだろうか。
それにしても,それにしても本当にびっくりなのは,民主党の他の議員からその政党の自浄能力を示すような言動が全く見られないことである。こぞって小沢氏をかばおうとする言動だけが目立ち,すごく異様である。この政党は本当に「民主」党なのだろうか。