もう手袋がいらなくなった。コートを着て歩いていると,ほんの少し汗ばむような気もする。いつの間にか暖かくなったもんだ。真冬の時と比べて,何となくお風呂の沸きも早くなったような。寒の戻りはあるのだろうか。
「水ぬるむ」というのは,早春の季語のようである。僕は昔から何となく好きな言葉なんだよな。四季の微妙な変化を敏感に察知し,そして自然を愛でる日本人らしい言葉である。あの「坂の上の雲」に出てくる正岡子規は次のような句を作っている。
「芹目高乏しき水のぬるみけり」
そして,わが種田山頭火は,
「汲みあげる水のぬくさも故郷(ふるさと)こひしく」
ただ,この山頭火の句はこの季節に作られたかどうかは分からない。
あぁ,そうそう。「坂の上の雲」で思い出した。僕はNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」については随分と期待していたのだが,がっかりしてしまった。原作にはない創作部分が結構含まれているし,このドラマの制作者の意図が見え隠れする。ちょうど,NHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの”一等国”」ほど露骨ではないにしても,偏向性を感じるのである。この「・・・アジアの”一等国”」という番組をめぐっては,出演者などから番組内容に偏向があったと批判され,損害賠償請求訴訟にもなっている。「坂の上の雲」はというと,その放送回数が中途半端で放送時期も相当に間延びしており,視聴者の興味自体もそがれてしまうのではないだろうか。余計なお世話かもしれないけど(笑)。