大久保「お前,人事異動の内示あったか?」
西 郷「ない・・・・・・。お前は?」
大久保「・・・・・・・ない。」
西 郷「はっ,はっ,は。これからも万年係長同士,よろしくな。」
大久保「まあな。お前だけ課長補佐だなんていうのは,ジェラシーだからな。」
西 郷「それはそうと,子ども手当法案は衆議院本会議で可決されて,今は参議院で審議されているようだな。お前のとこは,下の子はいくつになった?」
大久保「俺のとこは,もう16歳だ。だから,もう子ども手当てはもらえない。」
西 郷「そうか。俺んとこの下の娘はまだ13歳だから,この娘が15歳の4月1日の前日まではもらえる。でも,この子ども手当て法案というのは,何か変だぞ。」
大久保「恒久財源が確保できていないということか。」
西 郷「ああ。仮に参議院でもこの法案が通ったとして,本年度は月額1万3000円だが,次年度以降は月額2万6000円になる。そうすると,約5兆4000億円という巨額の財源が必要になるってぇのに,確たる具体的な成長戦略もないまま,恒久財源が確保できていない。」
大久保「俺はね,もらえないやっかみから言うんじゃないけど,これは典型的なバラマキだと思うよ。所得制限もない。年収2000万円の人ももらえる。国債なんかを発行してまでこんなことをしていると,結局国の借金をこれらの子どもが背負うことになる。将来にツケが回されるということだ。」
西 郷「そうだな。たまにはいいこと言うね,お前も。この子ども手当てというのは,一体何だろう。全ての子どもは国が養うべきだというような,国家社会主義的な発想だろうか。それとも少子化対策か。それとも何らかの経済効果を狙っているのだろうか。消費性向をどのくらいと見ているのだろうか。乗数効果は。」
大久保「ちぇっ。ちょっとばかしマクロ経済学の一部をかじったからって,偉そうに。」
西 郷「おい,それよりお前,そのだし巻き卵は俺が注文したやつだし,俺が食うべきものだろ,本来は。原則的は。究極的には。道義的には。・・・人情的には。」
大久保「・・・まあ,ほんとに了見狭いねお前。そんなミクロなこと。俺とお前の友好関係について,将来的な成長戦略を示していこうよ。」
西 郷「はぁ?何それ。」
大久保「お前さっき少子化対策といったけど,本当の意味で少子化対策を行うんだったら,フランスが一応の成功をおさめたように,母親が安心して働ける環境整備が重要だと思う。日本には保育施設の待機児童がすごく多い。スタッフも不足している。パチンコ代や飲み食い,貯蓄に回されるかもしれないお金のバラマキよりも,施設,人的整備などを充実させた方がよほどいいと思う。」
西 郷「それとな,腰を抜かすほどたまげたことがある。この子ども手当て法案,何と,国籍を問わず,保護者が日本に居住してさえいれば,その子どもが外国(母国)に住んでいても支給されるそうだ。担当大臣の国会答弁もそう言っていたし,厚生労働省児童手当管理室もそのような解釈,見解を示している。すごいことだよ,これはー。」
大久保「フィリピン人の親が日本で働いていて,母国に15歳未満の子どもが5人いたら,この5人に月額6万5000円が支給されるのか・・・。来年度は1人当たり月額2万6000円だから,13万円ということになる。中国人の親が日本に住んでいて,母国に15歳未満の実子が3人いて,養子縁組した養子が2人いても同じことになる。パスポートの偽造なんかが横行しているというのに,この養子縁組も偽装されなどしたら・・・。」
西 郷「いやー,すごいことになっているね,民主党政権は。さすがに,この母国に残した外国人の子どもに対する支給については,今後本当にそれでいいか検討されるようだが,人から突っ込まれて初めてその不都合に気づくような政権って,一体何なんだ。鳩山首相って,すごくとぼけた顔をしてるけど,顔だけじゃなくて政策や行動や言葉も発想もとぼけてるね。」
大久保「選択的夫婦別姓法案といい,永住外国人の地方参政権付与法案といい,民主党政権が続く限り,この国の形が徐々になくなっていくような気がする。」
西 郷「うん。人に人柄という言葉があるように,国にも国柄という言葉がある。日本が大切にすべき国柄がだんだん壊れかけているよな。」
大久保「あぁ,西郷,どうするよ。」