昨日の晩は飲み会だった。その会場に移動する途上で歩きながら見た月は,まことに見事な月であった。寒い夜空にまん丸で大きな月がポッカリと浮かんでいた。夜空にはえていた。月の光は明るく,何よりもその輪郭がくっきりとして全くぼやけていない。輪郭がブレていないのである。
ブレと言えば,鳩山という人の発言がまたまたブレている。米軍普天間飛行場移設問題で,この人は従前から今年の3月末までに政府案を一つにまとめると明言していた。つい先日,26日の記者会見でも「最終的には政府案を一つにまとめなくては交渉はうまくいかない。3月いっぱいをめどに政府案をまとめる努力をしている。」と述べていたにもかかわらず,その舌の根の乾かぬ昨晩,今度は,「いつまでに全部やらなきゃいけないという話ではない。今月中じゃなきゃならないとか,別に法的に決まっているわけではない。」とブレているのである。法律で決まっていないことなどは百も承知だ。それよりも一国の首相として,自分の発言に責任を持て。この人のこのような言い分は,何か不都合なことをしでかした少年が,「それは別に法律に反している訳じゃないもん。」と言い訳しているようなもので,実に卑怯である。
またまたこの人のせいで不愉快になってしまった。美しく見事な月の話だったのに。僕が心から敬愛するヨハン・セバスティアン・バッハは,幼いときに両親を相次いで亡くし,数年間は兄に育てられた。バッハは,音楽に対するやむにやまれぬ求道心,向上心,興味から,鍵のかかった戸棚からこっそりと兄の楽譜を拝借し,月の光で写譜していたという。同時代のヘンデルも,彼を法律家にしたいという父から音楽に関心をもったり,楽器を奏でることを禁止されていたが,音楽に対するやむにやまれぬ興味から,屋根裏に隠されていたチェンバロを父に内緒でこっそり弾いていたという。
今宵は飲み会もないことだし,月の光で写譜する努力を怠らなかったバッハに敬意を表して,教会カンタータなどを聴いてみることにするかな。