またまた桜の話である。だって,本当に見事なんだもの。朝の徒歩通勤経路に,小学校の裏道があるが,裏道とはいうもののその満開の桜の見事なこと。裏門にも桜が咲き乱れ,今朝は国旗(日の丸)が掲揚されていた。今日は小学校の入学式なのだ。こういう贅沢で見事なシチュエーションで小学生が入学してくる。みんな一生懸命に勉強と運動をして,立派な大人になってくれよ。頼むよ。
日本の桜の主なものは,ご存じソメイヨシノである。淡い色でその姿形や散り方は日本人の心をとらえて離さない。日本の国花についてはそれを定める法律は存在しないが,桜と菊が事実上は日本の国花として定着しているであろう。ところが,このソメイヨシノの起源について,韓国起源説というものがあるらしい。韓国では,韓国のチェジュ島の「王桜」とソメイヨシノを同一視して,「日本で楽しまれる桜は韓国起源のものである」といった論調があり,しかもその「王桜」の自生地にどんどんソメイヨシノを植林してしまうなどの活動まであるという。
先日,ゴルフで疲れてヘトヘトになって自宅で晩酌していると,NHKのニュースで,ソメイヨシノの起源について報道していた。そのニュースでは,韓国起源説に依拠せず,ウィキペディアにも書いてあるように,ソメイヨシノというのはエドヒガン系のコマツオトメとオオシマザクラの交配で生まれたサクラの園芸品種であるとしていた。「近隣諸国条項」ではないが,近隣諸国に配慮し過ぎるほどのNHKにしては,グッジョブである。
実際問題として,平成19年3月,千葉大学などの研究グループによる遺伝子解析によれば,ソメイヨシノがエドヒガン系のコマツオトメとオオシマザクラの交配で生まれた可能性が高いと学術的に究明されているし,やはり同じ年には,アメリカ合衆国農務省研究者による遺伝子比較調査によっても,韓国の「王桜」と日本のソメイヨシノとは別種であると発表されている。ウィキペディアには「韓国起源説」という用語の解説があり,それによると「韓国の個人・団体などが、他国の文化などの起源・伝播を朝鮮半島に求める,根拠不十分で非合理的な言説群の俗称」とある。このような現象の背景にある事情については,そのウィキペディアの該当箇所で縷々指摘されている。日本固有の文化でありながらこれまでその俎上に上がってしまったものとしては,次のようなものが列挙されている。
「剣道」,「剣術」,「侍」,「武士道」,「日本刀」,「柔道」,「空手」,「相撲」,「寿司」,「刺身」,「海苔」,「日本語」などなど。・・・・・つらいねぇ。
僕が思うに,一番大切なこと,事の本質は,起源などではなく,そのようなものを心から愛し,受け継ぎ,民族に定着,発展させてきたものこそが正に文化であるということだ。桜に限って言うと,桜の姿に心を動かされ,その散り際に「もののあはれ」,「無常」を感じ,だからこそ桜が咲いている間は精一杯愛でようという心情がその国,民族にそれこそ染み渡ってきたかどうかということである。日本人が桜を心から愛し,これに自分の気持ちを仮託してきたという事実は,古くは「万葉集」の中で詠われた次のような歌などからも明らかである。
「あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも」
「去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも」
「龍田山見つつ越え来し桜花散りか過ぎなむ我が帰るとに」
「梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや」
「春雨に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり」