とうとう「つける薬がない」シリーズも13までいってしまった。新聞報道によれば,アメリカのワシントン・ポスト紙の人気コラムの中で,先の核安全サミットに出席した鳩山由紀夫首相について「このショーの最大の敗北者は断然、哀れでますますいかれた日本の鳩山由紀夫首相だった」と表現されていることが明らかになった。確かにこのような表現は,一般論としては一国の首相に対して非礼であろう。でも,非礼ではあるが,その内容は正しいのである。この首相がその任に就いてからのこれまでの言動を総合的に評価すれば,やはり国の内外からこのように蔑まれても仕方がない。そのように評されても無理ないのである。
普天間飛行場移設問題に関する現行案というのは,日米の政治家,実務者が10数年にわたって協議し,これが政治的にも軍事的にも持続可能で最善だとして成り立ち,一旦は名護市も苦渋の選択として受け入れたものである。鳩山政権はそれが何故だめなのかについて説得的に説明をしてきただろうか。思い起こせば鳩山首相は,昨年秋のオバマ大統領との会談の際に「プリーズ,トラスト・ミー」と言って一応安心させた直後に,今度は現行案を前提とするなら協議する意味がないなどと180度違うことを言ってアメリカ側の不信を買った。折しも,訳の分からない「東アジア共同体」構想を打ち上げた頃だったから,その不信感は増幅した。その後この人は,現状では軍事的にも政治的にも極めて重要な日米同盟よりも,社民党のような政党との連立維持を重視して「国外,最低でも県外」などと成算もなく軽々しく述べた。結局その年には,移転先を「決めない」ことを決めた(笑)。
挙げ句には,年明けの名護市長選挙では少差だったが移設受入れ反対を表明した候補が当選し,ますます混迷の度を深めた。そして3月末までには政府案を確定すると言いながら,その期限直前には「3月末までにやらなきゃならないなんて,法律で決まっている訳ではない。」と言い出して,少なくとも僕は呆れかえった。それまでの間,「脱官僚」だか何だか知らないが,防衛省の実務者を交えながら防衛戦略上有効で実現可能な案を練ってきたフシもないし,かつてのように首相自らが沖縄を何度も訪れたということもないし,しかもアメリカ側と密に協議してきたフシも全くない。さらには,この人が「腹案」と称しているものについても,アメリカ側としては協議以前の案だと評価している。というのも,陸上部隊とヘリ部隊とを分断するような案が軍事的・防衛戦略的に有効なものとは到底言えないからだ。アメリカ側としては,政権交代がなされたことは事実として踏まえつつも,「鳩山らはもっとちゃんと仕事をしてくれ!」と言いたいのであろう。当たり前である。
実は先の核安全サミットにおけるオバマ大統領との僅か10分間の非公式会談の際,新聞報道によれば,この鳩山という人は,同大統領から「きちんと責任取れるのか」などと厳しい言葉を投げかけられたようだ。この鳩山という人のあまりにも軽く,あまりにも信頼するに足りない言動からすれば,アメリカ側がこのように抜きがたい不信感をもつのも当然なのである。
有権者は,昨年の衆議院議員総選挙で民主党に308もの議席を与えてしまった(僕はこれには絶対寄与していない)。でも,「民主党 やらせてみれば この始末」。バッハのマタイ受難曲第一部の最後に「人よ,汝の大いなる罪を悲しめ」という大コラールがある。今の政治状況は,正にこの曲名のとおりである。