中学生の時も,高校生の時も,音楽の時間の歌のテストはとても苦手だった。僕は音楽自体はとても好きだったのだが,歌のテストだけは気が重かったし,恥ずかしかったのである。先生の伴奏に合わせて個室でテストされるのならまだしも,衆人環視,みんなの前で一人ずつというのはどうも・・・。
おとといの夕食の時,娘のあかねちゃんが,来週音楽の時間で歌のテストがあると言って何やら口ずさんでいた。そのメロディーを聴いてすぐにピンと来た。何と,僕が以前から好きだったヘンデルの「私を泣かせてください」というアリアである。どうやら,この歌のテストは生徒が2曲のうちから好きな方を選択できるようで,もう1曲はメンデルスゾーンの「歌の翼に」という曲だそうだ。あかねちゃんは,「私を泣かせてください」の方を選ぶとのこと。
「私を泣かせてください」というのは,とても佳い曲,美しい曲で,ヘンデルの歌劇「リナルド」の第2幕で登場する有名なアリアである。敵の魔術師に捕らわれたアルミレーナという女性が悲嘆にくれながら恋人を想って切々と歌う。その歌詞の冒頭は次のようなものである。
「私を一人で泣かせてください 過酷な運命に ため息をつかせてください 失われた自由に ・・・・・・」
あぁー,ヘンデルもいいよね。メロディーメーカーだわ。ヘンデルはバッハと同じ年(1685年)にドイツで生まれたが,ロンドンに渡って大活躍した。この歌劇「リナルド」はロンドンに渡って初めて世に問うた歌劇で,初演は大成功を収めたということだ。
あと,ヘンデルの歌劇のアリアでお勧めなのは,ご存知,「ラルゴ」という名で知られた「オンブラ・マイ・フ」である。これは歌劇「セルセ」第1幕第1場で出てくるアリアであり,そのメロディーの美しさはたとえようもない。それにしても,部活で真っ黒に日焼けしたボーイッシュなあかねちゃんが,「私を泣かせてください」を歌うとは。想像もできないし,仮に想像できたとしても思わず笑っちゃう(笑)。