「墓標なき草原(上・下)-内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録」(楊海英著,岩波書店)という本を読んだ。昨晩読み終えたのだが,今でも得体の知れない心の動揺がある。この本の内容は,そのサブタイトルが示すとおりであって,内モンゴル自治区における被害者及びその遺族の慟哭が聞こえる。
この本は,著者自身の実際の体験だけでなく,むしろその内容の中心となるのは内モンゴル自治区に出向いて歴史の生き証人にインタビューして得た貴重な証言である。これは決してプロパガンダなどではなく,歴史の真実なのであろう。実際にその生き証人が見聞きしていなければ表現できないような具体性と迫真性をもっている。
中国共産党による文化大革命とは一体何だったのか,とりわけ内モンゴル自治区におけるそれは何だったのか。この本の終わりにある「視座 ジェノサイドとしての中国文化大革命」や「おわりに」の箇所に要領よくまとめてある総括部分が圧巻であるし,非常に説得力がある。平成16年7月に中国で開催されたサッカーアジアカップにおける日本人及び君が代に対するブーイング,食料やペットボトルの投げつけ,暴言,平成17年4月の北京における反日暴動で日本大使館の窓ガラスが割られたり,日本料理店が襲撃された事件,平成20年に長野・善光寺一帯を埋め尽くした中国人による威圧と乱暴,これらの事件を見聞きするにつけても,そこに「造反有理」を叫んだ文化大革命の紅衛兵の亡霊を見るのである。
この本は岩波書店から出版されているが,これは少し意外だった。いずれにしても,この本は一読に値するし,強くお勧めしたい。