うちのカミさんは,テレビドラマ好きであるが,とりわけサスペンスものが大好きである。「サスペンス見るのが生き甲斐」などと言っては,僕や娘のあかねちゃんを困惑させている。日本テレビ系列の火曜サスペンス劇場の放送が打ち切りとなった時などは,心身共に相当に落ち込んでいた。でもうちのカミさんは,今でもテレビドラマ,とりわけサスペンスものは,アイロンをかけたりしながらよく見ている。
ドラマなどを見ているカミさんは,とても表情豊かである。例えば,ヒロインなどが意地悪な登場人物から極めて理不尽な仕打ちを受けているシーンなどでは,すごくシリアスな,時には鬼気迫る表情を見せる。その意地悪な登場人物に対して露骨な憎悪の念を示す表情と,ヒロインに対する心からの同情。また,ヒロインが慰められたり,元気を出すように励まされたりしているようなシーンでは,うちのカミさんもヒロインのうなづきに合わせて自分もうなづく。別にうなづいてくれと頼まれてもいないのに(笑)。あれっ?何か静かだなと気づいた時には,静かにもらい泣きをなさっている(笑)。
このように,ドラマ(特にサスペンスもの)を見ているカミさんは,夏の天気のようにドラマの場面,場面に応じて的確にその表情を変えていく。実は僕は,ドラマそのものよりもカミさんの無警戒かつ豊かな表情の変化の方を面白いと感じることがある。
僕が二階で寝転がって読書をし,カミさんが一階の居間でテレビを見ている時,居間の方からカミさんの笑い声が聞こえた。あれ?娘のあかねちゃんが外出先から帰って来たのかなと思って確認してみると,カミさん以外誰もいない。彼女はテレビを見ながら一人で笑っていたのである。カミさんがテレビを見ながら一人で笑うのは日常茶飯の事である。情操豊かな人なのだ。微笑ましいとさえ思っている。彼女は干支がねずみであるように,マメに家事にいそしんでいるのだから,サスペンスなどを見てストレスを発散することはとても良いことなのではないかと思う。