娘のあかねちゃんは,クラスメートから「どん子」と呼ばれている。そういうあだ名である。なぜそういうあだ名になったのか。それには長い歴史がある。
あかねちゃんが1,2歳のころ,あんまり可愛かったものだから,父親として何か愛称を考えていた。その結果,一番最初に思いついたのは「怪獣アカネゴン」。思い起こせば,「どん子」なるあだ名の源流はここにある。その後,「怪獣アカゴン」,「珍獣アカゴン」などを経て,よりシンプルに「アカゴン」に落ち着いたのだ。それ以降は,ほんのごく一時期,ゴンチャロフのチョコレートが美味かったから「アカゴンチャロフ」と言ってみたり,「あかぽんこちゃん」と言ってみたりしたこともあったが,あかねちゃんが小学校低学年のころは,「アカゴン」というのが定番のあだ名になっていた。
ところが,幼稚園以来の父兄仲間の一人であるRMさんという女性が,本来は「アカゴン」であるべきはずなのに,あろうことか「あかどん」と勘違いしてずっと使っていた。その女性の娘のひとりであるYちゃんは,あかねちゃんと同じ小学校でとても仲良しだったので,いつのまにか,あかねちゃんのあだ名が「あかどん」,「どんちゃん」,「どん子」というふうに思わぬ歴史的変遷を遂げてしまったのである。
父親としては内心,この「どん子」というあだ名はあまり好きではない。あかねという優しい名前なのに,それとは似てもに似つかない響きであるし,女の子の名としては若干野蛮で品性を欠く・・・(笑)。実は中学校に上がった時,あかねちゃんとしてはこのあだ名から脱皮する絶好のチャンスがあったのだ。「あかね」とかせいぜい「アカゴン」とかに戻すチャンスが。しかしながら,中学校に進学した当初,自己紹介の項目にあだ名というのがあり,あかねちゃんは,「どん子」,「どんちゃん」と呼ばれていたことを正直に発表してしまったために,現在も「どん子」というあだ名のままなのである(笑)。
種田山頭火があかねちゃんと同じくらいの年齢の時には,「おこぜ」というあだ名で呼ばれていたらしい。それに比べればまだマシだが(笑)。種田山頭火がちょうど僕と同じ年齢のころには,近所の子供たちから「ざんきの小父さん」というあだ名を付けられていたそうだ。山頭火は酔いが覚めるといつも口癖のように「慚愧(ざんき)にたえん」と言っていたからだそうだ。僕もあまり飲み過ぎると,それに近いあだ名をつけられかねない。