このたびの尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では,民主党政権は取り返しのつかない失態を演じた。一体全体この政権は,この日本という国をどこまで貶めたら気が済むのであろうか。僕は一介の弁護士に過ぎず,僕ごときが何を述べても詮無いことだが,一日本国民として黙ってはいられないのだ。今回の民主党政権のあまりにも無定見,場当たり的,無為無策,不覚悟ぶりには暗澹たる気持ちになる。とうてい怒りが収まらないので,僕のこのブログも当分の間はこの話題が続くと思う。
ことは日本固有の領土が侵されつつあるという大問題なのである。この尖閣諸島が日本固有の領土であることは明らかであり,この点を確認するのであれば,取りあえずは「外務省 尖閣諸島 基本見解」とキーワードを入れて検索してみるといい。また国際法上,ある土地について自国の領土であると主張できる根拠を領域権原というが,この領域権原のいくつかの類型のうち,日本は「先占」(無人の地を最初に占拠すること)を主張することができ,現に日本政府は明治28年に領土的編入の閣議決定を行ったのである。翌明治29年には古賀辰四郎という人が日本政府から尖閣諸島貸与の許可を得て,鰹節工場や珊瑚の加工場を操業させていたのである。さらに,大正9年には,中国漁民が遭難して尖閣諸島の魚釣島に流れ着いた際に,日本の石垣島の住民が助けたことがあり,中国の駐長崎領事はこのことについての感謝状を石垣島の人々に感謝状を贈っているのだが,その感謝状には「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記載されている。中国も尖閣列島は日本に帰属していることを認めていたのである。にもかかわらず中国が,1971年12月に突如として尖閣諸島の領有権を主張しだしたのは,前にもこのブログで述べたように,この海域に膨大な量の石油が埋蔵されている可能性が国連調査により明らかにされたからであり,資源目当てと領海拡大の野望があるからに他ならない。こんな中国の身勝手な行動については,国際法上は,以前に黙認し,許容していた関係に反する主張を後になって行うことは許されないという禁反言の法理に抵触する可能性も指摘されている。
したがって,「尖閣諸島は中国固有の領土であり,船長の身柄拘束は違法かつ無効で即時釈放を求める」との中国の主張は明らかに根拠がないのである。ところがあろうことか民主党政権は,延長された勾留期限まで数日を残し,中国共産党政府の恫喝,威迫,チャイナハラスメントとも表現される数々の嫌がらせ(閣僚級以上の人的交流の停止,レアアースの禁輸措置,邦人4名の不当な身柄拘束,対日輸出品の通関業務の遅滞などなど)に膝を屈し,処分保留のまま船長(被疑者)を釈放してしまったのである。
中国漁船が2度にわたって海上保安庁の巡視船2隻に船体を故意に衝突させたことは明らかに公務執行妨害であり,その証拠も十分であったはずである。したがって,今回の件では,主権(裁判権)の行使として公務執行妨害罪で起訴し,懲役刑ないし罰金刑を宣告した上で早期に国外退去処分にするのが最も妥当な解決だったのだ。それなのに,無定見,場当たり的,無為無策,不覚悟の民主党政権は,処分保留のまま船長(被疑者)を釈放してしまった。処分保留だから起訴,不起訴の最終的な判断はしていないというのかもしれないが,被疑者自身をあの本国に帰してしまったのだから,もうどう考えても起訴も処罰もできないだろう。要するにこれは,日本の主権(裁判権)を事実上放棄してしまったに等しい。これによって結果的にはどういうことになったのか。それは日本が,領有する尖閣諸島の海域で発生した事件に関する主権(裁判権)を事実上放棄したというメッセージを発してしまったがために,結局は中国の不当な思惑どおりに,尖閣諸島については「領土問題」にまで格上げさせてしまったことを意味するのである。
(とうてい怒りが収まらないので,続く)