先日ある年配の方と一緒に歩いていましたら,それはそれは本当に美しい花が咲いておりました。割と高い木に咲いていたのですが,人間の握り拳の大きさで真っ白いきれいな花でした。私は恥ずかしながらあまり花には詳しくないので,その年配の方に「何の花でしょうか。」と尋ねましたら,「これはさざんか(山茶花)ですよ。」と教えてくれました。真っ白の見事なさざんかでした。そうか,さざんかというのはこんなに美しい花だったのかと思いました。また自分もいい年をして何も知らないのだなと恥ずかしく思いました。若い頃には路傍の花やその他の自然に見入るようなことはほとんどなかったのですが,最近では年のせいか,それとも精神的な余裕か,それとも現世への未練か,自然に見入ることが多くなりました。
さざんかで思い出したのは,童謡の「たきび」です。この歌の2番は次のような歌詞になっております。
「さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき あたろうか あたろうよ しもやけ おててが もうかゆい」
いい歌ですね。好きな歌です。特に「あたろうか あたろうよ」という箇所も好きで,これは子供たちの会話のようで,とりわけ仲良し同士という感じがよく出ています。そうか,この夏はあんなに暑くて閉口したのに,もう「きたかぜぴいぷうふいている」季節になってしまったのですね。
また,私の好きな俳人種田山頭火には,さざんか(山茶花)を季語にした次のような作句があります。
「雨の山茶花の散るでもなく」
「また逢へた山茶花も咲いてゐる」