私は朝食に納豆を食べることが多い。何となくではあるが血栓を溶かしてくれそうだし,血液もサラサラになりそうだし,さらに良質のタンパク質,ビタミンB1,イソフラボン,亜鉛などが育毛に良いのではないかという「信仰」があるからだ。おそらく私が朝食で納豆を食べる割合は87%程度に達しているだろう。一方,娘のあかねちゃんも,父親が好むものを負けじと試してみる傾向があり,最近では彼女も朝食に納豆を食べる割合がおそらく71%を下らないと思う(ちなみに,うちのカミさんのそれは12%程度に過ぎない)。
ある日の朝食時,娘のあかねちゃんも納豆を食べるというので,私は冷蔵庫から納豆を2つ取り出し,私とあかねちゃんのランチョンマットの上に1つずつ置いた。見ると別々の銘柄の納豆しかなく,一つの方の賞味期限はもう一つのそれよりも3日ほど早い。でもいずれもまだまだ期限までに余裕はあるのだが,私は少しズルをして新しい方を取った。ただ,このうちの1つは大粒の納豆,もう1つは小粒の納豆であったことは明らかだったのだが(なお,うちの家族は国産大豆のものしか食さない),包装のフィルムが外されていたので外部からはどちらが大粒でどちらが小粒なのか判明しなかった。
とりあえず私の方のパッケージを開けてみると,ショックにも小粒の納豆だった。し,しまった・・大粒の方が良かったのに・・。そこで私は,遅れて着席したあかねちゃんに,何食わぬ顔で「賞味期限からするとこっちの方が新しいから換えてあげるわ。」と言って,少し遠慮し,固持したあかねちゃんではあったが,「新しい方がいいでしょ?」と言って,交換した。私はこのようにして,大人げなくも大粒の納豆の方を手に入れ,そそくさとマスタードやたれを入れてかき回し始めたのである。
その後にパッケージを開けた娘のあかねちゃんは,いつもと若干違う少しばかり鋭い視線を私に投げかけた・・・。父と娘の間に一瞬,緊張が走った(笑)。どうやらあかねちゃんも,大粒の納豆の方が良かったらしい。あかねちゃんは,利発なのか,瞬時にして私の目論見を見破ったのである。見破られた決定的な理由は,私が一度パッケージを開けた後で交換を申し出たからである(笑)。新しい方を相手に譲るのであれば白いパッケージに印字された日付を見れば足り,何もふたを開ける必要はないからだ(笑)。でもマスタードを入れないあかねちゃんとしては,もはや取り戻すことはできなかった(笑)。
見破られた後,私はあかねちゃんに,「お為ごかし」という味わい深い日本語の意味を講釈してお茶を濁しつつ,許しを請うのであった。
(注)「お為ごかし」・・・表面は人のためにするようにと見せかけて,実は自分の利益を図ること(大辞泉)。