ロハスな生活などといった言葉があるが,このロハスというのは「Lifestyles Of Health And Sustainability」のそれぞれの大文字をとって略した言葉である。最後のSustainability(サステナビリティ)は持続可能性というほどの意味である。
昨日の晩,今日はお酒はやめとこうと決意していたのに,うちのカミさんが美味しそうな「おでん」なんかを作ってしまうものだから,つい魔が差して晩酌と相成った。テレビを見ながらお酒を飲んでいると,午後7時のNHKニュースの冒頭ではいきなり中国が世界第2位の経済大国になったと報じていた。
確かにGDPではそうなのだろう。日本という国を称する時の枕詞のようになっていた「世界第2の経済大国」はもはや日本には使えなくなった。でも,いろいろなものの本を読んでいると,日本としては,もちろんその時点における最善の戦略を立てて果敢に実行していく勇気は必要であるが,将来を悲観などする必要は全くなく,ましてや僕個人は中国という国に対する羨望などは全くないのである。というのも,中国経済の歪さは異様なほどであり,深刻な環境汚染などのリスクを含め,とても持続可能だとは思えないからである。
これまで中国の経済を牽引し,GDPで日本を凌駕するまでの要因となったのは,「2つのエンジン」と言われる「輸出」と「投資」である。しかし,諸外国と比べて相対的に輸出依存度が高いその中国製品の輸出は,今後は人民元切り上げ圧力と人件費上昇で「安さ」が売り物にならなくなって頭打ちになる可能性が高い。それに,実は中国の輸出の屋台骨を背負っているのは外資系企業であり,ついさきごろも日系企業が思い知らされたように,頻発するストなどで人件費が上昇すれば,外資系企業としては中国より人件費の安いベトナムやインドネシアなどにシフトするだろう(ただでさえ,いろんな意味でチャイナリスクは高いのだから)。
一方,もう一つのエンジンである投資は主として不動産であるが,この不動産バブルは崩壊寸前だと言われている。中国政府が2009年に銀行に指示して実行されたとされる約130兆円もの新規融資のかなりの部分の行き先が不動産投資であった。中国の都市部にだれも住んでない投機用の高層マンションやオフィスビルが林立しているのはそのためである。いったんバブルが崩壊した後の姿は,超多額の不良債権を抱えた銀行など,どうしようもない状況を招来する。
GDPを構成するのは,政府支出,個人消費,貿易黒字,設備投資などであるが,中国の個人消費率は何と約37%に過ぎない。アメリカは約70%,日本だって約60%もあるのに,中国の個人消費率は低いのである。それはひとことで言えば,個人消費を下支えする中間所得層が希薄で,その可処分所得が必ずしも高くないからである。約40%の富を1%程度の人が占めていると言われているように,貧富の格差はすさまじい。これに加えて,中国の人民の財布のひもが固いのは,セーフティーネット(年金や医療)が整備されていないから,どうしても将来が不安で,これに備えてお金を貯蓄に回してしまうのである。日本でもその傾向にあるが,セーフティーネット(年金や医療)の彼我の差は歴然としている。今後中国は,それまでのように輸出に頼ることができないのであれば,内需(個人消費)に活路を見い出さざるを得ないが,可処分所得が少なければこれも期待できず,かと言って,可処分所得を上昇させるには賃金(人件費)をアップさせるしかないが,それだと安い人件費を売りにした「世界の工場」は維持できず,製品の競争力も低下する。「保八」(経済成長率8%を維持するという中国政府の政策)は維持できないのである。
これに加えて,さすがのNHKも指摘していたとおり,現在の中国が直面しているさらなる深刻な問題はインフレである。これが庶民の生活を圧迫し,社会不安を増大させている。かと言って,インフレ抑制には金融引き締めということになるが,それをやってしまうと,こんどは不動産バブル崩壊の恐れがある。
大変なジレンマというかトリレンマとも表現できる状況なのである。本日は経済評論家でもないのに,偉そうなことを言ってすみません(笑)。タネ本は,「中国の経済専門家たちが語る本当に危ない!中国経済」(石平著,海竜社),「中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!」(三橋貴明著,ワック株式会社)でした(笑)。