私が意欲作だと思った「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」(若宮健著,祥伝社新書)という本の話の続きである。
韓国にもかつてパチンコ産業があり,日本円にして約3兆円の規模だったようだが,韓国では,パチンコによる依存症の危険性を国として認識し,2006年8月には全面禁止になった(同書12頁)。素晴らしいことである。パチンコ産業が盛んなころ,韓国でも,パチンコがらみの自殺,家庭崩壊,犯罪が目立ちはじめ,社会問題になっていたのである。
では日本ではどうか。昨日のブログでも書いたように,どう考えてもパチンコは賭博なのに,駅前の一等地にパチンコ店がでーんと構え,主婦や若者,老人が昼間から夢中になり,店内にはATMまで設置されているような国がまともな国とは到底思えない。ギャンブル依存症という病気,パチンコマネーの北朝鮮への流出,パチンコにのめり込むことによる多重債務,家庭崩壊など,やはり日本でも同様の問題がある。
この本は,韓国では迅速にパチンコの全面禁止ができたのに,日本ではできない大きな理由として3つほどを挙げている。
第1は,政治家たちが政治献金に目が眩み,業界を擁護していること(同書180頁)。パチンコ業者数十社から構成される「パチンコチェーンストア協会(PCSA)」のアドバイザーとして,2010年10月現在,複数の政党の国会議員が名を連ねているが,民主党議員の数が圧倒的に多い(同書148頁)。さらに,パチンコ業界を応援する団体として「民主党娯楽産業健全育成研究会」だけでなく,さらに「民主党新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム」という組織もある(同書150頁)。彼らは,正に票と金が欲しくて業界に迎合し,日本国民のことを真剣に考えてはいない。彼らの活動目的(すごいことが書いてある)を知るにつけて暗澹たる気持ちになる。どんな議員が名を連ねているかはネットを調べればすぐに分かる。
第2は,マスコミがメディアとしての責任を果たしていないこと(同書180~181頁)。韓国でパチンコが全面禁止されたことをマスコミはその当時報じたであろうか。そしてパチンコがらみのネガティブな問題をちゃんと報道しているであろうか。我々のメディア・リテラシーが試されている。要するに新聞もテレビも広告収入を失いたくなく,パチンコ業界に頭が上がらないのである。パチンコメーカーやパチンコ店のCMが新聞,テレビを飾らない日はない。
第3は,天下りによる警察利権である(同書198頁以下)。財団法人保安電子通信技術協会(「保通協」),日本電動式遊技機工業協同組合(「日電協」),日本遊技機工業組合(「日工組」),などなど・・・。パチンコ業界からは試験検定料など莫大なお金が保通協などに支払われる。そして,これらの多くの団体の役員に名を連ねているのは警察OBである。これではどうしようもない。
こういう本がこれからもどんどん世に出て欲しい。