振り込め詐欺の加害者を心から軽蔑しております。悪知恵を働かせて手の込んだことをし,特に高齢者から老後の生活のための蓄えをむしり取るような連中は,許し難いと思います。どのような職業であれ,お金というのは額に汗して稼ぐものだ!
振り込め詐欺にも様々なものがありますが,2週間ほど前の産経新聞の記事によりますと,イラク・ディナールやスーダン・ポンドの振り込め詐欺が猛威をふるっております。どういうことかというと,イラクの通貨であるイラク・ディナールを買えば「別の業者が高く買い取る」とウソをついて金をだまし取る悪質な手口が横行し,同じようにスーダンの通貨であるスーダン・ポンドに関しても同じようなウソをついてお金をだまし取るのです。
もう少し詳しく言うと,例えば,Aという業者から突然自宅に電話がかかり,「アメリカ軍がイラクから撤退すれば,イラクのディナールという通貨の価値が跳ね上がるんですよ。今買っておけばめちゃくちゃ儲かりますよ。このチャンスを逃してどうするんですか。」などと言われて,1口(2万5000ディナール)10万円での購入を勧誘するんです。取り敢えず断るか,考えてみると言って電話を切ったとしても,ほどなくして今度はBという業者から電話がかかり,「イラクのお金,ディナールをお持ちになっていませんか。もしお持ちでしたら,是非当社に買い取らせてください。欲しいんです。」などと言って,あたかもこの通貨が高騰しているかのような錯覚に陥らせてしまうのです。結局,再びAという業者から電話がかかってきた時に,「これは儲かるな。」と思って100口近くもの多額の購入をしてしまうのです。このように,複数の加害者が役割分担をして騙していく手口を「劇場型」の振り込め詐欺と言います。
しかし,イラク・ディナールの実際の為替レート(5月8日~14日)は100ディナール当たり7円2銭に過ぎず,2万5000ディナールでも1755円にしかならず,50倍以上もの完全なぼったくり状態なのです。スーダン・ポンドに至っては,為替レートすら不明なのです。国民生活センターによると,スーダン・ポンドの相談者のうち,実際にお金を振り込んだ総額は合計約9億100万円に達し,イラク・ディナールについても,その被害合計額は約24億1000万円に上っており,その被害者の大半は高齢者だということです。さらに悪いことには,騙された被害者の傷心に乗じて,「あなたが買い取らされたその業者は詐欺業者だ。弁護士を紹介します。」などといってさらにだまし取ろうとする悪質業者もおります。
このような被害の救済については,振り込んで間がない場合には,いわゆる「口座凍結」戦法が有効だと思います。
高齢者が特に騙されやすい背景事情としては,主として2つほどの理由があると思います。第1は,やはり老後の生活不安があり,虎の子の資産を少しでも増やしたいという心理が働いてしまうこと。第2は,核家族化です。昔ならば,高齢者はもうご隠居さんの身で,直接電話に出たり,来訪者に直接応対せず,お嫁さんなどがまずは防波堤になったり,同居の家族に相談したりする機会がありましたが,独居の老人では守ってくれたり,忠告してくれる機会が少なくなっているのです。
とにかく,悪質業者にあぶく銭をつかませてはなりません。言い古されたことですが,「うまい話には気をつけろ!」です。