前にもこのブログで書いたことがありますから,二度目というのは気が引けますが,童謡・唱歌の「ふるさと」という曲は,本当に佳い曲ですね。つくづくそう思います。
「兎追いし かの山 小鮒釣りし かの川 夢は今もめぐりて 忘れがたき ふるさと 如何にいます 父母 恙 無しや友垣 雨に風につけても 思い出ずる ふるさと 志を 果たして いつの日にか 帰らん 山はあおきふるさと 水は清き ふるさと」(作詞/高野辰之,作曲/岡野貞一)
私も幼少の頃,約2年間,熊本県の田舎でのんびりと過ごした経験があります。このふるさとという曲を聴いてじーんとくるのは,その当時目に焼き付いた田舎の風景が私自身の原風景として残っているからでしょう。でも,私だけでしょうか。都会育ちでも,田舎育ちでも,この歌詞に出てくるような風景は日本人誰もが有している心象風景なのではないでしょうか。
「世界三大テノール」として有名,しかも親日家(来日は20回以上)であるプラシド・ドミンゴさんは,この4月に来日し,東京・渋谷のNHKホールでのコンサートのアンコール曲として,この「ふるさと」を日本語で唱われたそうです。本当にありがたいことです。東日本大震災や,福島第一原発の事故などで,海外のアーティストによるコンサートのキャンセルが相次ぐ中で,このドミンゴさんは,「来ないつもりは全くなかった。震災を前に音楽ができることはほとんどないが,音楽はつかの間であっても人を幸せにできる。悲しみや苦しみを忘れさせることができる。」と話されたそうですし,日本の悲劇をワシントンで知り,総監督を務めるワシントン・ナショナル・オペラでの公演前,「君が代」を演奏してくれたということも伝えられています(産経新聞)。
ドミンゴさんは,アンコールでこの曲を選んだ理由を,「ノスタルジックで誰もが知る曲と聞いた。日本語の曲を歌ったことはあるが,今日は特別な意味があった。いつの日か強い気持ちになれる日が来ると信じています。」と述べられたそうです。
そして,ドミンゴさんが日本語で「ふるさと」を歌い始めると,約3600人の聴衆からはどよめきが起こり,やがて聴衆全員が総立ちになって合唱し,多くの人は泣きながら唱っていたそうです。