ああ,日本人に生まれて良かったなと思いながらいただく食べ物に,うなぎがあります。かば焼きというのでしょうか,各店で昔から注ぎ足されてきた秘伝の甘辛いタレをつけてこんがりと焼き,それを白いご飯の上にのせていただくのです。たまらなく美味しいと思います。
先日,うちのカミさんと一緒にうなぎを食べに行きました。うちのカミさんは,うなぎが好きで好きで仕方ないようです。うなぎに対する思い入れの強さは,どうやら私や娘のあかねちゃんの比ではないようです。実は,その数日前にうちのカミさんと一緒に,そのうなぎ屋さんを訪れた際,のれんが外に出ておらず,あいにく臨時休業中だったのです。その時のカミさんの落胆ぶりといったら尋常ではなく,悔しさと人生の不条理に対する苦渋とが表情ににじみ出ており,気の毒で正視に耐えないほどでした。・・・そ,そんなにうなぎが食べたかったのか・・・。結局,その日は「臥薪嘗胆」の気持ちでお互いにラーメンをすすったのであります。
さて,先日,再度カミさんと一緒にそのうなぎ屋さんを訪れたのです。再び不幸に直面したらどうしようかと思いながら共に歩き,通りの角を曲がってしばらくしたら,かば焼きの良い匂いが風に乗って私達の鼻腔をくすぐったのです。のれんもちゃんと出ておりました。その時のカミさんの安堵と嬉しそうな表情・・・。さて,店内に入りますと,残念ながら長い行列ができていました。その行列を目の当たりにしたカミさんの表情はとたんに曇ってしまいました。露骨でした。その心の中を読むのにこれほど容易な人もいません(笑)。
その行列の中の自分たちの位置が徐々に先頭に近づくにつれ,何かしらカミさんの胸の高鳴り,鼓動が空気を隔ててこちらまで伝わるようでした。いよいよ席に案内され,注文し,あとはうなぎの登場を待つだけです。期待に胸を躍らせるカミさんは,あたかもコンサート会場で好きなアーティストのステージへの登場を待つ瞬間のような表情をしておりました。いよいよ彼女が注文した「ひつまぶし」と私が注文した「うなぎ丼」が無事に運ばれてきました。その際のカミさんの表情は,内心の嬉しさを他者に悟られまいと必死にその嬉しさを押し殺したような表情でした(笑)。そして愉悦の表情でいただいたのです。
それにしても,うなぎ屋さんで食べているお客さんはどの人も美味しそうに食べております。日本人は本当にうなぎが好きなんですね。まあ,うなぎにもいろいろなメニューがありますが,私は最近では「ひつまぶし」でもなく,「うな重」でもなく,食べやすくシンプルな「うなぎ丼」が好きです。
バッハの教会カンタータが素晴らしいのは言うまでもありませんが,数は少なくても世俗カンタータもいいなと思います。特に「コーヒーカンタータ(おしゃべりはやめて,お静かに)」は素晴らしい。バッハも相当なコーヒー好きだったようです。このコーヒーカンタータの最終曲は三重唱の「猫はけっしてねずみを見逃しはしない」という曲です。名曲だと思います。そして,うちのカミさんも,けっしてうなぎを見逃したりはしません(笑)。