日曜日の産経新聞に,「この本と出会った」というコーナーで現横浜市長の林文子さんが書かれた記事がありました。これまでの自分の人生を振り返り,本,文学作品というものの素晴らしさについて体験的に述べられ,そして日本人が持つ豊かな感性がちりばめられた作品として,永井荷風の「墨東綺譚」に言及されています(すみません,「ぼく」という字は墨の前に氵があります)。
この記事の中では,「カバヤ文庫」のことが書かれていました。林文子さんは小学校に入って熱中したのが,昭和27年から29年まで続いた「カバヤ文庫」だったそうです。1箱10円のキャラメルを買うと,中に券が入っていて50点集めると本が1冊もらえたそうです。この「カバヤ文庫」では,「しらゆきひめ」や「レ・ミゼラブル」などの世界文学が子供向けに翻訳されていたので,子供達は集める楽しさと作品に触れられる興味で一杯だったのでしょう。
どうです。昭和らしいですよね。私も母から10円をせびって,よく近所の駄菓子屋さんまで嬉々として走って行ったものです。石ころに蹴躓いて,転んで膝をすりむいた記憶もあります(笑)。ただ,さすがにこの「カバヤ文庫」の企画は私も知りませんでした。昭和29年には廃刊になったようですから,まだ私も生まれていないからです。でもカバヤという名前にピンと来ました。カバヤ食品のお菓子は私も知っていますし,キャラメルや「ジューC」という清涼菓子はよく食べた記憶があるからです。懐かしいです(笑)。
1箱10円のカバヤキャラメルを買うと中に券が入っていて,50点集めると本が1冊もらえる・・・。しかも,世界の名作などが子供向けに翻訳されたものが。素晴らしい企画じゃありませんか。確かに営業面からすれば,これはあくまでも販売促進(販促)活動の一環なのでしょうが,もらえる品物が健全で,ためになりますよね。これで時代を担う少年少女が多くの文学作品に触れるという貴重な機会が提供される訳ですから。モバゲーやグリーのようなゲーム,「コンプガチャ」よりもね(笑)。今では,国民の所得水準も当時の比ではありませんし,欲しい本があれば直ぐに小遣いで買えるでしょう。でも,こういう「カバヤ文庫」のような企画や指向性は日本的で大切にしたいと思うのですよ。
それにしても,子供ながらにカバヤというのはお菓子屋さんにしては変な名前だなと思っていたのですが,どうやらカバヤという名前の由来は,戦後間もない頃に創業されたことから,平和を愛し,おとなしい動物であるというイメージを持つカバから採られたようです(笑)。