あのー,このクソ暑いのに人の文章など読みたくない,と思われるかもしれませんが,お付き合いください。
「岸信介証言録」(原彬久編著,毎日新聞社)という本を読んでしまいました。感動しました。岸信介という政治家については様々な評価があるでしょうが,その確固たる信念に基づいて国のために身を賭した立派な政治家だと私は思います。最近では,民主党のいろいろな連中が,いとも簡単に「身を賭して」などと軽々しく連発していますが,本当に噴飯ものです。政治家には何よりもこの岸信介のような国家観と確固たる信念がなければなりません。
あんまり簡単に総括してしまうのはよくないとは思いますが,政治家としての岸信介の功績は,何と言ってもこの日本を真の独立国家たらしめる目的で行った「保守合同」と「安保改定」でしょう。本当はこれに加えて,「憲法改正」まで行いたかったのでしょうが・・・。「保守合同」というのは,いうまでもなく自由党と日本民主党との保守合同による自由民主党の創設,「安保改定」というのは,その時点で可能な限りの当事者対等を前提とした日米安全保障条約の改定のことです。安全保障の枠組みの選択としては,やはり岸信介の判断に誤りはなかったと思います。
この1960年の安保改定の際には,国会議事堂や首相官邸は凄い数のデモ隊や群衆に取り囲まれ,6月19日午前零時に新条約自然承認となる日の晩は,首相官邸に閉じ込められた形になった首相岸信介は実弟の佐藤栄作(当時蔵相)と二人きりでその晩を過ごし,「とにかく殺されればここ以外ないじゃないか。」などと言って,死を覚悟したといいます。そして,「安保改定」を果たした岸首相は,その後ほどなくして退陣表明をします。実際に内閣総辞職となったのは7月15日ですが,その前日の14日,岸信介は暴漢に刺され,瀕死の重傷を負っています。命がけだったのです。岸信介は「新安保条約を完全に成立せしめることが自分の使命であって、それさえ達成すれば、後はいろいろやる人がいるわけだからね。ただしかし、安保条約を有効に成立せしめるのは、日本で俺一人しかいないんだと、殺されようが何されようが、これをやることが日本のために絶対必要であると思っていました。」と発言しております(同書297頁)。
岸信介の座右の銘といいますか,好きな言葉(いずれも孟子の言葉)がやはり同書では紹介されております(345頁)。
「至誠にして動かざる者は、未だ之(これ)有らざるなり」(完全な誠の心があれば、人を動かし得ないものは未だかつてない)
「自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば、千万人と雖(いえど)も吾往(われゆ)かん」(反省してやましいところがなければ、千万人の反対があっても自分の道を進もう)
久しぶりに感動した本でした。自由民主党の安倍晋三代議士は,この岸信介さんの外孫です。安倍晋三さんの首相在任は1年ほどの短さではありましたが,その極めて短い間に彼がやり遂げた功績をマスゴミ,いやマスコミはあまり評価していないのか,伝えようとしません。①教育基本法の改正,②防衛庁の防衛省昇格,③憲法改正国民投票法の制定などです。どれもこれも重要で必要なことばかりではありませんか。その覚悟の度合いには違いはあっても(笑),安倍晋三さんは政治家としての岸信介さんを目指しているのでしょう。今の自由民主党の幹事長をはじめ,このままでは同党に期待したくても期待できません。やはり安倍晋三のような方々が頑張ってくれなければね。