このブログでもよく登場しますが,私は岸信介という政治家をとても尊敬しております。その長女が洋子さん,その婿が亡き安倍晋太郎(元外務大臣),その子が安倍晋三です。ですから,岸信介は安倍晋三の母方の祖父ということになります。
岸信介という政治家は,三木武吉らと努力の末に,その後の日本の発展の礎となる保守合同を成立させ,そして文字通り命を賭けて,3万人のデモ隊に囲まれながらも「声なき声」の存在を確信して安保改定を成し遂げた政治家です。国士といっても良いでしょう。岸信介の政治家としての器と凄さと能力は,今の売国的な民主党政権を構成している政治家とは全く次元が違います。比較するのも本当に失礼なくらいです。菅とか野田とかいった連中が,よく「命がけで」などという言葉を連発し,もはやインフレ状態ですが(笑),彼らの「命がけで」という言葉は鴻毛より軽い。実際に岸信介は退陣の直前に暴漢に刺され,瀕死の重傷を負っております。文字通り命がけだったのです。
文芸評論家の福田和也は,岸信介という政治家のことを「本物の責任感と国家戦略を持った戦後唯一の総理」と高く評価しております。そこで私は,福田和也の「悪と徳と-岸信介と未完の日本」(産経新聞出版社)という本を読もうかなと思ったのですが,今回は工藤美代子の「絢爛たる悪運 岸信介伝」(幻冬舎)という本にしました。本当に感動しました。
でも今日は,岸信介という政治家の良き家庭人としての一面を彷彿とさせるエピソードを,この「絢爛たる悪運 岸信介伝」(工藤美代子著)という本の中から引用して締めくくりましょう。これは長女洋子が幼少の頃,父信介から可愛がってもらい,面白い話を聞かせてくれた時のことを回想した一節です。
「中野の家では夏の夜など、兄と私を蚊帳の中に呼んで大仰な身振り手振りでおとぎ話なんかをしてくれました。欲張りな和尚さんが小僧に隠れてお餅を食べるお話です。安念と珍念という小僧はいつもふたりがお使いに出されると和尚さんがお餅をこっそり食べているのに気がついて、自分たちの名前を『ぽてぽて』と『ふうふう』に変えて欲しいと頼むんです。ある日、ふたりをお使いに出すと、和尚さんはさっそくお餅を囲炉裏で焼いて食べ始めました。餅についた灰を払うためにポテポテと手を叩いたところ、隠れていた安念が『はアい』と出てきました。仕方ないので餅を安念にやって、次の餅は叩かずに口に入れたら熱いのでフウフウとやったら、隠れていた珍念が『はアい』と言って出てきて餅をせしめた、というお話です。いつも同じ話なんですが、父の話しぶりがおかしくてなんべん聞いても面白かったものです」(97頁)