いや,本当に感動しました。10月28日(日)の天皇賞(秋)は天覧競馬,すなわち天皇皇后両陛下がお出ましでした。そして,このレースでイタリアのミルコ・デムーロという騎手が,日本のエイシンフラッシュという馬に騎乗して見事優勝を果たしたのですが,レース後にメインスタンドに戻ってくると,手をお振りになって祝福される天皇皇后両陛下に対し,下馬してヘルメットを取り,右膝を付く跪座で最敬礼をしたのです。その見事な礼節,振る舞いに対し,会場はどよめきと,大歓声です。本来は本馬場で下馬してはいけないことになってはいるのですが,彼は天皇皇后両陛下に心からの敬意と感謝の念を示したかったのでしょう。本当に感動しましたし,涙さえ出てきました。「ミルコ・デムーロ」で検索すれば,その時の動画もアップされていますよ。
このミルコ・デムーロというイタリア人騎手は,割と日本でも馴染みが深く,「私が一番好きな国はイタリア。次が日本。」というのが口癖で,新幹線で東京駅に到着した際には,丸の内の皇居方面に向かって必ずお辞儀をするそうです。この騎手は,去る日曜日の天皇賞(秋)の優勝の際に「両陛下がいらした特別な日に,勝つことができてとてもうれしい。」とコメントしています。そして,ウイニングランの際には両手でハート形を作って観衆に応えました。彼のコメントによると,このハートの形は「I LOVE JAPAN 日本のみなさんを愛しています。特別な日に勝つことができて,本当にうれしい。僕の日本に対する感謝の気持ちを表した」という意味だそうです。
このイタリアの騎手は,実は昨年の東日本大震災の直後に行われたドバイワールドカップにおいて,日本の馬であるヴィクトワールピサに騎乗して見事に優勝を果たし,レース後のインタビューでは,東日本大震災という惨事に言及し,「今日は日本人のために朝から祈っていました。ドバイワールドカップを勝てるなんて信じられない。日本を愛しています。ありがとう。」と涙ながらに語っていたそうです。
外国人騎手の中にもこういう親日的な人がいたとは。そして,天皇皇后両陛下に対する心からの敬意,彼には伝統の騎士道精神が宿っているのかもしれません。
それにしても,デムーロという騎手の見事な礼節,振る舞いを目にして,そしてそれに感動した場内の観衆の大歓声を耳して,不覚にも泣けてきたのはなぜなのでしょうか。日本人にとって天皇皇后両陛下の存在はやはり何物にも代え難く,そういった認識はやはり自分だけではなく,みんなも同じなのだという心からの共感が得られたからだと思いますし,歴史と伝統を重んじるイタリア人騎手のこのような礼節,振る舞いを見るにつけ,彼から改めて日本における天皇という存在の有り難さを教えてもらったような気がします。