先日,ある会合で,望外の素晴らしい体験をしました。ある女の子の歌声に心を揺さぶられるほどの感動をしたのです。その女の子は,生まれつき全盲という障害を負っている12歳の中学生ですが,将来の夢は全国各地の老人ホームを訪問して歌を歌い,おじいちゃん,おばあちゃんに元気になってもらうことだそうです。
その時は彼女に3曲歌ってもらいました。素晴らしい歌声でしたし,間違いなく人を感動させる何かがあります。1曲目から思わず涙が出ました。2曲目は唱歌「ふるさと」を歌ってくれ,大勢の前でハンカチを出すわけにもいかず,涙が流れるままにしておりました。
普段何かと疲れ,時には不安を抱えている私も,彼女のその歌とトークに大いに励まされました。彼女には確かに,優しさと強さがありました。
俳優の大滝秀治さんは10月2日に87歳で亡くなりましたが,大滝秀治さんに関する読売新聞の記事に,これまた感動しました。その読売新聞の記事は,朝日新聞に投稿した58歳の女性の思い出話のことでした。その女性の思い出話とは・・・
「小学2年の春、アパートのベランダ下にタンポポが黄色いじゅうたんとなって咲き誇った。1階に住むおじちゃんに取っていいかと聞くと、『全部取っちゃあ、だめだよ。来年また咲くように残しておこうね』と、ざらついた、でも温かい声で話してくれた。『どうしてお仕事にいかないの?』と聞くと、『今ね、お仕事なくて、奥さんに食べさせてもらってるの』とニコニコ答え、ベランダ越しに紙包みのビスケットを手渡してくれた。」
実はその「おじちゃん」こそが50年前の大滝秀治さんだったそうです。若かったとはいえ,不遇を囲い,将来の不安を抱えながらも,昼間ぶらぶらしている理由を悪意なく尋ねたその女の子に,ベランダ越しに紙包みのビスケットを手渡す・・・。その記事は,「大滝は、老境にあってこその彼ではなく、見事に50年前から大滝秀治であり、またあり続けたのだった。アパートの黄色いじゅうたんの情景が、映画のワンシーンのように目に浮かぶ。ほほえましくて、涙が出る。」
正にそのとおりです。これも優しさと強さです。私はこれにも励まされました。