年のせいなのか,それともその他の理由があるのか,私にはよく分かりませんが,自分の聴く音楽のレパートリーの幅がだんだんと狭くなっているように感じます。もっと幅広く,様々な種類の音楽も体験すればいいのにという漠然とした考えがある一方で,最近では,結局鑑賞するのはヨハン・セバスティアン・バッハの音楽だけ,あるいはバッハの音楽が中心となってしまっております。
どうした訳か,バッハだけは別格なのです。昨晩もそうでした。バッハの平均率クラヴィーア曲集第1巻,第2巻が2枚のDVDに収まっているやつをじっくりと聴いてみました。第1巻の第1番から第12番までの担当がアンドレイ・ガヴリーロフ,第1巻の第13番から第24番までの担当がジョアンナ・マクレガー,第2巻の第1番から第12番までの担当がニコライ・デミジェンコ,第2巻の第13番から第24番までの担当がアンジェラ・ヒューイットです。
本当に,改めて感動しました。バッハの音楽の凄さに・・・。バッハの生前の言葉に,「すべての音楽の狙いと最終的な目的は、神の栄光と魂の浄化(再生)に他ならない。」というものがあります。バッハは敬虔なルター派で,教会カンタータやミサ曲など,その音楽は神の栄光をたたえるものが多く,そして聴く者は自己の魂の浄化(再生)がはかられると実感します。私はキリスト者ではありませんが,バッハの音楽に接すると心から感動いたします。
音楽の歴史はバッハ以前も,以降も発展してきましたし,無調音楽や前衛的な音楽もございます。でも前衛音楽のルイジ・ノーノは死の前日にバッハのコラール「甘き死よ、来たれ」を聴いていたそうですし,そして武満徹さんもまた,死の前日にバッハの「マタイ受難曲」を聴いていたといいます。この二人の現代の作曲家が死の直前にバッハを聴いていたということは,やはり何かを暗示させます(作曲家細川俊夫さんの言)。また,20世紀音楽の革命児と謳われたあのストラヴィンスキーという作曲家も,「バッハに還れ」と述べております。
とにかくバッハは素晴らしい。私の場合,聴く音楽の幅がだんだんと狭くなっておりますが,最終的にはバッハに収斂していくような感じであります(笑)。
今日,3月21日はバッハの誕生日です。