本当にその日は疲れました。車であちこち移動し,自宅の駐車場に車を駐めたのは午後9時近くになっておりました。疲れた頭にはショパンの曲もいいですね。ラジオを付けていたら流れてきたのです。幸運にも,ショパンの中でも特に私の好きなバラード第4番を偶然聴くことができました。
実は,その前にはリストの超絶技巧練習曲のいくつかが流れており,疲れた頭には相当にこたえていたのです(笑)。所詮好き嫌いの問題ですが,リストの曲は,特に超絶技巧練習曲のような即物的で超絶技巧をひけらかすような曲は苦手なんです。リストは「ピアノの魔術師」かもしれませんが,以前にもこのブログで書いたように,わたしは「ピアノの詩人」ショパンの方を圧倒的に好みます。
さてさて,リストはというと,その娘はコジマ。そのコジマと結婚したのがリヒャルト・ワーグナーです。ワーグナーが生まれたのは1813年ですから,今年はその生誕200年に当たります。生誕200年を祝したイベントや記念コンサートはあちこちで企画されているのでしょうか。ワーグナーの曲としては,私の場合はゆっくり鑑賞する時間がないので(バッハは別ですが),楽劇や歌劇の序曲,前奏曲を聴くことが多いです。
それでも,今からもう10年くらい前ですが,楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を,珍しく最初から最後まで夢中になって鑑賞したことがありました。本当に素晴らしかった。ワーグナーの音楽も,疲れた頭には良いかもしれません。
この楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は,「マイスタージンガーの動機」,「行進の動機」,「愛の動機」など,全体を通じて素晴らしい音楽がちりばめられており,また筋書きも面白いのですが,特に第3幕最後のハンス・ザックスの演説は感動しました。
「栄えあるドイツのマイスターに受け継がれぬ限り,ドイツの真正な芸術も人々の記憶から失われよう。だからこそ,言っておこう。ドイツのマイスターを敬うのだ!そうすれば,心ある人々をとらえることができる。そしてマイスターの仕事を思う心があれば,神聖ローマ帝国は煙と消えようとも,ドイツの神聖な芸術はいつまでも変わることなく残るであろう!」
ワーグナーは,楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」においては,あのヨハン・セバスティアン・バッハを強く意識して作曲したと言われています。私自身も,ハンス・ザックスの演説を聴いていて,自然とバッハを連想してしまったことを覚えております。あるサイトでのコメントによると,ワーグナーは,バッハの対位法的音楽の中にこそ,ドイツ音楽のひとつの原点を見いだし,ドイツ文化を謳歌するこの作品(楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」)の音楽的よりどころにしたと指摘されています。
機会があればもう一度全曲通して鑑賞してみたい曲です。