「中国高度成長の構造分析-中国モデルの効用と限界」(何清漣著,辻康吾編訳,小島麗逸解説,勉誠出版)という本は,現在の中国社会の特徴,問題点をすごく分析的にしかも鋭利に指摘しております。この何清漣という女性評論家(アメリカ在住)には,「中国現代化の落とし穴-噴火口上の中国」(草思社)や「中国の嘘-恐るべきメディアコントロールの実態」(扶桑社)などといった力作,労作もあり,数年前にいずれも読んでみましたが,データも豊富で極めて説得力のある論証がなされております。
食品など,私は口に入るものは「チャイナフリー」を心がけています。中国産の食品は安心できないと思っているのです。この「中国高度成長の構造分析-中国モデルの効用と限界」(何清漣著,勉誠出版)という本にも記載されているように,中国人民は中国共産党政府を全く信用しておらず,政府役人自身も「裸官」という言葉どおり,国を全く信用しておらず,賄賂等の枠外収入(レントシーキング)によって蓄えた資産と家族は既に海外に移転させ,有事の際には自分自身もいつでも高飛びができるようにしており,何よりも実社会で生活している人民同士,互いに全く信用し合っておりません。職業倫理も確立されてはおりません。食品等の製造者は,たとえ人体に有害なものであっても売れればどんなものでも製造し,市場に流してしまいます。そして愕然としてしまうのは,中国の高官や役人の上層部は,そのような食品の安全管理を徹底しようとはせず,その一方で自分達が口に入れるものだけは安全なものを確保しようと姑息な措置を講じております。この本にも次のような記述がありました。
「中国の食品生産者が高利潤を追求し、農産物の生産過程において大量に化学肥料を使用し、また加工中に大量に各種の人体に有害な添加物を使用するため、早くからの『私は皆に、皆は私に害を与える』という社会的公害となっている。中国において食品加工生産チェーンでは係わった人はみな加害者であり、同時にまた被害者であるとも言える。このような全社会に係わる偽造・粗悪商品の製造行為に直面して、政府はいろいろな方法で食品の生産工程を規範化しようと考えたわけではなく、極めて無責任な手法を採用した。国家の免許検査制度を公務員の『尋租』(レントシーキング)の機会にした一方で、一方では高級公務員のためには食品特別供給基地(国務院中央国家機関食品特別供給センター)を設立し、これで以て高級官僚のための食品安全を保証し、政府の食品生産監督管理責任を完全に放棄したのである。」(66頁)
・・・・何と言いますか,とても卑怯ですね。庶民の口に入るものや海外に輸出されるものはどうでもよく,自分達の口に入るものだけは安全性の追求をしているのです(笑)。これでは社会に不信が渦巻くのも当然です。