記 者「本日は,先生にインタビューに参りました。さる人からご紹介いただいたのです。お忙しいところ,誠に恐縮です。」
老 翁「・・・どこをどう見たって忙しくは見えんじゃろうに。まあ,よい。・・で,何を聞きに来たのじゃ。」
記 者「プロ野球のことです。斯界の権威だとお聞きいたしております。忌憚のないところをお聞かせ願えればと思いまして。」
老 翁「はっ,はっ,はあ。買いかぶりもいいとこじゃ。でも,まあ,ワシも長く生きてきた。もうそろそろお迎えが来ても良い頃じゃでのう。このワシが少しでも人様のお役に立つことができるのであれば,望外の喜びじゃ。・・・・・で,プロ野球の何が聞きたいのじゃね。」
記 者「巨人の先日の対中日戦3連敗についてはどのようなご感想をお持ちですか?」
老 翁「愉快ではないっ!というか,誠に不愉快じゃ。」
記 者「そ,そこのところをもう少し詳しく。」
老 翁「こいつめ,空気の読めぬ奴じゃ。・・・・でもまあ,今の巨人の抱えている課題のいくつかが露呈したな。」
記 者「ぐ,具体的には・・。」
老 翁「まず思いつくのは,長野じゃ。バッターボックスに立つとき,ベースから離れすぎじゃ。あれでは外角球の厳しいコースは手が届かんじゃろう。うちの婆さんも全く同じ意見じゃ。」
記 者「そ,そこで婆さんが登場ですか。」
老 翁「うむ。この間も茶の間で,長野の打席を見ていて,1ボール2ストライクのカウントで,ワシも婆さんも思わず口を揃えて『次は外角に落ちるスライダーじゃね。』とテレビの前で予想し合った。案の定,そうなってあえなく三振じゃった。あんなにベースから離れていては,どのチームも外角の落ちる球で攻めるじゃろう。分かっていてもそれに引っかかる。ど田舎の爺さん,婆さんに配球や攻められ方を読まれ,その通りになっているようじゃいかん。少しは物事を考えて改善せねば。長野は1番だったり,7番だったり,その他の打順だったりで一定できない理由は,何しろムラがあるし,そのような弱点を抱えているからじゃ。」
記 者「今の巨人の課題と仰いましたが,ついでに打つ方ではどんなことを憂えておられますか?」
老 翁「村田じゃな。チャンスの時に限って運悪く彼に打順が回ってくる(爆笑)。その瞬間いつも婆さんと顔を見合わせて苦笑いじゃ。この前なんか7番か8番を打っていたんじゃないか?対中日戦3連敗の後,対阪神3連戦の1試合目ではブレイクしたが,何しろチャンスに弱い。メンタル面の問題じゃないかとも思う。それかいっそのこと,長嶋さんやワシのようにB型に血液型を変えたらここ一番に強くなるんじゃないか。プレッシャーなどには負けず,マイペースで何も考えずにバカーンと打てばいいんじゃ。」
記 者「・・・さ,さすがに血液型を変えるというのは・・・」
老 翁「忌憚のないところをしゃべれと言ったではないか。」
記 者「い,いくら忌憚ないと申しましても,血液総入れ替えというのは・・・。」
老 翁「それとな,対中日3連戦のどれかの試合で,村田はやはりチャンスで凡退してベンチに帰る際,ヘルメットだか何かを地面に叩き付けてチームメートをびっくりさせたことがあったじゃろう。あれはダメじゃ。見苦しい。未熟だな。長嶋でも王でも一流選手があのように物に当たるようなマネをしたところを見たことがない。長いこと生きているワシが言うのだから間違いない。一時の感情を抑制できず,物に当たり,あのような乱暴な振る舞いをするとはな・・。これを目にした少年少女がどう思うか。・・・・まあ,いずれにしても村田はもっとチャンスに強くなければダメじゃ。」
記 者「では,投げる方の課題としてはどんなことが指摘できるでしょうか。」
老 翁「今ホールトンは二軍で調整中か?彼にしても,澤村にしても,その他の投手にしても,立ち上がりが不安定じゃな。初回に2点も3点も取られたらいかん。攻撃にも必ず響くのじゃ。それと,先頭打者を四球で出すことほど見ていてイヤなものはない。特に内海や澤村にワシのインタビュー記事をちゃんと見せるがよい。先頭打者を簡単に四球で出すなど,守っている方は本当にイヤなものじゃ。こういうシーンでは,ワシも婆さんも思わず『バカモン!』とテレビの前で毒づいておる。」
記 者「・・・あ,あまり興奮されると血管が切れたりするんじゃ・・・」
老 翁「バカモン!」
人里離れた山間のある集落を訪れた三流スポーツ紙の記者と老翁とのやり取りはその後も延々と続きました(気が向いたらこの続きはお伝えいたします【笑】)。