仕事柄,パソコンで書面をたくさん作成することが多いのです。そういう時,ふっと我に返り,息抜きも大切だなとつくづく思います。肩や腕に力が入り,眼も疲れ,頭皮が固く張っている感じがあり(今や極めて大切でいとおしい髪の毛によくありません),しかも呼吸が浅く,交感神経がかなり勝っているな・・などと気付くのです。
そういう時は,コーヒーを入れてもらい,バッハの音楽を聴いてすぐに息抜きです。こんな音楽の聴き方は邪道かも知れませんが,「あっ,あの曲が聴きたいな。」と思いついてネットで検索すると,たいていはユーチューブにアップされていて,その音楽(私の場合はたいていはバッハ)を短時間ではあれ楽しめるのです。便利と言えば便利です。
それとコーヒーです。私は1日3杯くらいは飲みますかねぇ。バッハも当時流行し始めたコーヒーをよく飲んでいたようです。その遺産の中に5つのコーヒー・ポットやカップ類が含まれておりますし,例の世俗カンタータ「コーヒー・カンタータ」も作曲しているくらいです。バッハは1685年生まれですが,ウィーンではその2年前の1683年のトルコ軍による包囲がきっかけになってコーヒーの大流行が始まり,ドイツ圏にも広まっていきました。バッハが不肖私めと同じコーヒー党,そしてビール党(遺産の中に錫製のジョッキ4点あり)であったことも間違いないようです(「J・S・バッハ」106~107頁,礒山雅著,講談社現代新書)。
昨日の夕刻も,仕事の合間に息抜きをして,バッハの曲を数曲聴きました。カール・リヒターやグレン・グールド・・・。いずれも素晴らしい演奏です。この巨匠たちは,私が社会人として就職した前年と当年に,相次いで亡くなりました。その当時本当にショックを受けたことを今でも覚えております。私のおぼろげな記憶ですが,グールドに関しては,その最晩年の「ゴルトベルク変奏曲」のCDが発売され,早速購入して感動したその矢先の,正に急逝でした。
礒山雅さんは,前掲の著作で次のように述べておられます(193頁)。
「ところで、私が最高のバッハ演奏家として傾倒しているのは、カール・リヒター(一九二六~八一)と、グレン・グールド(一九三二~八二)の二人である。一九六〇年代の前後に最盛期を迎えた彼らのバッハ演奏についてはいろいろな機会に述べてきたので、本書では簡単に触れるだけにしよう。だが、五〇歳そこそこで亡くなったこの二人の天才によるバッハは、今後とも不滅だと、私は信じている。そこには、現代人のこの上なく鋭敏な魂が、密度高く注ぎ込まれているからである。」