もうすぐ日本に帰国されますが,このたびの53年ぶりの天皇皇后両陛下のインドご訪問はとても意義があり,大成功だったのではないでしょうか。両陛下は行く先々でインド国民から大歓迎を受け,尊敬を集めておられます。シン首相が空港まで直々に出迎えになるのはとても珍しいことのようです。
さて,インドといえば私はとても親日的な国であると思っております。インド議会では1985年以降,毎年,広島,長崎の原爆の日のどちらかで,議長が審議冒頭に犠牲者を追悼する発言をし,議員が起立して黙祷しているという事実をご存じでしょうか。このたびのご訪問でも,天皇陛下はこのことについて「国を代表し,とりわけ犠牲者の遺族の心を酌み,心から感謝の意を表します。」と挨拶されました。
それに昭和天皇崩御の際,インドという国は何と三日間も喪に服してくれたのです。
思い起こされるのは東京裁判の時のインドのパール判事の判決書です。そのパール判事は東京裁判が終わった4年後,再来日したのですが,日本の教科書が東京裁判史観にそって「日本は侵略の暴挙を犯した」と教えていることを大いに憂い,「日本の子弟が歪められた罪悪感を背負って卑屈,退廃に流されて行くのを私は平然と見過ごすわけにはいかない」と嘆きました。
12月1日の産経新聞の「産経抄」にはやはりこのたびの天皇皇后両陛下のインドご訪問のことについて書かれており,53年前に皇太子・同妃殿下として同国を訪問された際,時のネール首相は「日本の政策には同意できたもの,できなかったものもあったが,つねにわれわれは日本と日本国民,その美徳を尊敬してきた。日本は偉大である。」と演説したそうです。東京裁判史観に対し,本当にそれで良いのか,いや歴史の本当の見方をより深く正しく勉強しようという向きには,「世界がさばく東京裁判」(佐藤和男監修,明成社)という本が絶対に,絶対にお薦めです(笑)。あたかも前頭葉にロボトミー手術を施されたかのように(若狭和朋氏の表現),さらには「閉された言語空間」(江藤淳氏の著作)の中で生きることを余儀なくされてきたように,日本国民は東京裁判史観から脱却できないまま時を重ねてきました。このような状態についてドイツ文学者の西尾幹二さんも「戦後の戦争に負けた」と含蓄に富む発言をされています。
さてさてそれにしても,皇后陛下はもちろん今も高い気品と優しさに溢れておいでであり,今上天皇ともども我々の誇りですが,53年前の若かりし時のインドご訪問の際のお美しさといったら全く例えようもありません。