このたび中国は,無人月探査機を打ち上げ,月面への軟着陸に成功したようですね。約3か月間,月面での探査活動をするそうです。中国は,これを大々的に報道し,旧ソ連,アメリカに次ぐ三か国目の「偉業」として「どや顔」で宣伝しております。中国がこのような活動を行う理由については,何よりも国威高揚,示威の目的であり,また実際に資源探査の目的もあるということが指摘されています。でも,中国の国内の状態があれだけ酷いにもかかわらず,月面探査などといった活動は,どう見ても「偉業」なんかではなく「異形」なんですけどね。
これはひがみなんかで言っているのでは全くないのだけれども,国威高揚,示威という中国の目的にもかかわらず,私たちはそれだからといって中国という異形の国に尊敬の念を抱き,憧憬を覚えるでしょうか。今の中国共産党のあり様を見ていますと,警戒こそすれ,尊敬や憧憬を集めるような国とはとても思えません。次に生まれ変わる時,中国に生まれるなんて死んでも嫌ですから(笑)。
一言で言えば,この異形の国は優先順位というものを全く分かっていないということに尽きます。換言すれば,自国の民を幸せにできないような政権(中国共産党)には正統性はなく,中国という国自体も,月面探査や防空識別圏の設定なんかよりも,例の大気汚染,水質汚濁(重金属汚染等),貧富の格差,年間20万件を超える各地での暴動,そして最近のテロなどなど,国民を不幸せにしているこのような絶望的な状況の改善こそが喫緊の課題なのだということです。全く優先順位が違う。
中国の江蘇省南京市政府は12月4日,大気汚染物質PM2.5の濃度が最悪のレベルに達したとして,市内の全ての小中学校,幼稚園に対し,臨時休校・休園の通知を出しました。一般市民にも外出を控えるように呼びかけました。この日の夕方,PM2.5の濃度が12時間連続して300を超え,重度汚染の状態になったのを受け,南京市政府は初めて最高レベルの「赤色警報」を発令したのです。画像で見てもとても人の住むような所ではない状態であり,正に「暗黒大陸」です(ラルフ・タウンゼント)。そして12月に入ってからの大規模なスモッグは,31ある省・市・自治区のうち25に及び,100以上の都市で観測されています。一般市民にとっては,空気清浄機とマスクだけが頼みの綱で,杭州市など多くの都市ではマスクが売り切れ,各家庭では数台もの空気清浄機がフル回転しているということです。また,週末を利用して山や森に出かける「肺清浄ツアー」も人気だといいます(笑)。
でも本当は同じ人間としてこれは決して笑い事では済まされない事態でしょう。それに中国共産党の高官は,多くは「裸官」として既に家族や多額の資産を海外に移転させ,何かあればすぐに自分も高飛びできる手配をしているといいます(外国の国籍を取得済みの者も多い)。要するに彼ら自身も,中国という国に未来はないと悟っているのでしょう。
日本国籍を取得している石平さんは次のように述べております。
「現在の中国の農耕地は、化学肥料や農薬まみれです。そもそも農民からすれば、農地は一時的に国から借りているもので、自分のものではないのです。だから借りている間に、できるだけ生産量を増やそうということで、無制限で化学肥料や農薬を使う。そのために土地が劣化して、水も汚染されてしまう。役人も企業も民衆も、みんなが金儲けに奔走して、その結果、環境汚染が加速度的に進んでしまいました。中国が現在直面している問題は、もはや経済成長といったレベルではなくて、人間としてどうやって生きていくのかという問題になっています。」(「中国はもう終わっている」192頁,黄文雄・石平共著,徳間書店)
このたび軟着陸した中国の無人月面探査機の姿を見るにつけ,何か哀れな感じがいたします。繰り返しますが,そして余計なお世話かも知れませんが,月面探査なんかよりも自国の民を幸せにしたらどうか,少なくとも綺麗な空気と美味しい水を味わうことができるようにすべきでしょう。主席の習近平は「中国の夢」と称して膨張的で挑戦的でやたら勇ましいことばかり主張しておりますが,首相の李克強はそれよりも「人々がきれいな空気を吸い,安全な水を飲み,安全な食品を食べることが」重要だと述べております。外見も,言っていることも,少なくとも李克強の方が習近平よりも頭が良さそうです。