冬の季節に入ってからもう大分経ったような気がしますが,出勤時に街を歩いていて,今が一番寒いと感じます。本当に「立春とは名ばかりで」という時候の挨拶のとおりです。
さて,そのご夫婦を見かける時は,たいていは奥さんがこれから出勤しようとするご主人を見送る場面です。私の自宅近くにある銀行員の社宅と思われる共同住宅の門の前に奥さんが立ち,50メートルほど先にある曲がり角でご主人の姿が見えなくなるまでずっと見守っておられ,その曲がり角の所で必ずそのご主人と奥さんが再び向き合い,互いに手を振って別れるのです。40歳代前半と思われるそのご夫婦の間では,ごく自然にそのような振る舞いができるのでしょうし,結局はお互いが感謝し合っているからでしょうね。朝,いつ見かけても微笑ましく思います。
手前味噌になりますが,我が家でもそのような伝統はあり,家族の誰が出かけても,また家族の誰が帰宅しても,玄関ドアの所まで他の家族が「(行ってきます)行ってらっしゃい」と見送り,他の家族が「(ただいま)お帰りなさい」と出迎えます。誠にありがたい伝統だと思っております。
さて,感謝といえば,産経新聞の社説でも指摘されていたように,今回のオリンピックの表彰台こそ逃しましたが,スキージャンプ女子の第一人者,17歳の高梨沙羅選手も,ワールドカップで勝ち星を重ねるごとに,競技の振興に今まで力を尽くしてきた先輩女子ジャンパーへの感謝を口にします。私も以前から気づいていましたが,彼女はインタビューを受ける際,いつでも「今の自分があるのは先輩たちのお陰です。」とのコメントを欠かさないのです。いつも謙虚だし,いつも感謝の気持ちを表します。素晴らしいことだと思います。
ある記事で読んだのですが,元女子スキージャンプ選手で,現ジャンプ女子日本代表コーチの山田いずみ氏が過去を振り返って仰るところによれば,今から20年ほど前は「女子にジャンプは不可能」という偏見があり,アスリートとしての未来は簡単には描けず,大会出場は断られ続け,試合開始前の試技にとどまることが多かったようです。山田いずみ氏が中学生の頃,長野県飯山市の大会で女子の部が設けられたが,出場者は彼女ただひとりで,どんな成績であっても山田氏に渡ることがわかりきった優勝賞品としてティアラが用意されていた。しかし,山田氏に続いて葛西賀子が女子ジャンプ界に現れ,渡瀬あゆみや伊藤有希らもこれに続いていく。女子ジャンプ界の先駆者たちは偏見と闘いながらも,ともに団結して女子ジャンプ界を盛り上げてきた。
ワールドカップ等で今や押しも押されぬ第一人者になった高梨沙羅選手は,若年ながらもそういう苦難の歴史を十分に知っているからこそ,「先輩」への感謝をことあるごとに口にするのでしょう。