日曜日の夕方は,外出していない限り,NHKの「猫のしっぽ カエルの手」という番組を観ております。出演されているベニシア・スタンリー・スミスさんという方は,京都の大原の古民家で暮らしているイギリス人女性ですが,何とも言えない精神的な奥深さを感じ,思索的で芯の強い方のように見受けられますし,何よりも日本の文化に完全に溶け込んでおられ,かつ,日本の文化を高く評価してくれているようで,何やらとても嬉しく思います。この番組を見終わるといつも何かほんのりとした気分になるのです。特に彼女のエッセイが良いですね。
彼女の出自は伝統ある英国貴族の家系ですが,心が満たされなかったのか,19歳でインドなどバックパッカーとして世界を放浪する旅に出ます。そして1971年に九州南部に辿りついて以降は日本で過ごすことが多く,1996年からは京都・大原にある築百年を超える古民家に移り住み,豊かな自然や優しさ溢れる人間関係の中で余生を送られています。
日本という国,人,自然,文化,歴史,伝統については,そこに住む日本人にはその良さがそれなりに分かっているとは思うのですが,外国人から評価されることをきっかけに,改めてその良さを再認識するということは確かにあると思います。NHKの「猫のしっぽ カエルの手」という番組を観ていてもそのように感じます。「逝きし世の面影」(渡辺京二著,平凡社ライブラリー)という本は,これまで私が読んだ本の中でも特に印象的で正に名著というべき著作ですが,江戸末期,明治時代に訪れた諸外国の外交官,軍人,文化人らが当時の日本及び日本人に接した率直な感想,描写がこれでもか,これでもかと紹介されています。自然の豊かさ,人々の表情の明るさ,子どもをかわいがる親,おおらかな風俗(混浴,行水など),礼儀正しさ,民度の高さ,優しさと思いやりの心,工夫された愛らしいおもちゃや工芸品,簡素で清潔な生活スタイル,清貧などなど・・・。
この番組は,ベニシアさんの京都・大原の住まい(古民家)での日々の生活(ハーブ栽培,造園,手料理,地元の人々とのふれあい,知人との交流,自然探索)をテーマとするものが多いのですが,2月9日(日)放送のこの番組は「祈りの道~熊野古道・高野山~」というタイトルでしたし,2月23日(日)放送のそれは「雪国のぬくもり~福島県会津地方~」で,いずれもベニシアさんが遠出の旅をしながら日本の豊かな自然に触れ,旅先での人との交流を通じて触れ合い,感動を新たにするというものでした。海外旅行ももちろん興奮しますし,刺激もあり,楽しめることは勿論ですが,こういう番組を観ておりますと,改めて日本の豊かな自然と文化を再評価することができます。