今日は朝から時雨れておりましたし,やはりまだまだとても寒い季節ではあります。ただ,2月11日の建国記念日,徒歩で事務所まで散歩のような感じで行く道すがら,何となく春の気配も感じられました。
自宅近くの桜並木の蕾は少し赤みを帯びていました(この桜はソメイヨシノではなく数週間早く開花します)。それに何となく,何となくですよ,そよ吹く風も少し春先の暖かみを感じました。果物屋さんの店先には有田産の八朔(ハッサク)が並べられてもいたのです。
さて,何度も同じ話をするようになると年を取った証拠だなどと言われそうですが,いつ見ても雀(すずめ)という鳥は可愛い。本当に可愛いし,私は雀が大好きなのです。雀の方も,私が希代の雀好きだということを知っているのか(笑),私がそっと近寄っても逃げはしません。
ただ雀さんに関しては,唯一懺悔しなければならないことがあります。私が22歳の頃,東京で学生同士の集まりがあり,その集まりの前夜,学芸大学駅前の焼鳥屋さんで勧められるままに雀を食べてしまったことがありました。大変申し訳ないことをしたと思っております。
前にもこのブログで書いたと思いますが,私は柳田國男や宮本常一の民俗学に大変興味があり,今は「日本の昔話」(柳田國男著,角川ソフィア文庫)という本を読んでおります。この中には雀も登場いたします。
「雀と啄木鳥」という題の津軽地方に伝わるお話です。昔の昔,雀と啄木鳥(キツツキ)とは二人姉妹だったそうな。親がもう病気でいけない(危篤)という知らせが届いた時,雀はちょうどお歯黒を付けかけていたところでしたが,直ぐに中断して親の元に飛んでいって看病しましたとさ。雀はそれで今でもほっぺたが汚れ,嘴(くちばし)も上の半分だけはまだ白いのであります。一方,啄木鳥の方は親が危篤の知らせを受けても紅を付け,白粉を付け,ゆっくりおめかしをしてから出かけて行ったものですから結局親の死に目に逢うことができませんでした。だから,雀は姿は美しくはないけれどいつも人間の住むところに住んで,人間の食べる穀物を入用なだけ食べることができるのに,啄木鳥の方はお化粧をしてきれいではあるけれども,餌にありつくためには朝から人里離れた森の中をかけ歩いて,木の皮をつつくなどしてやっと一日に三匹程度の虫しか食べることができないのだそうな。
今,角川ソフィア文庫では柳田國男没後50年を記念し,「柳田国男コレクション」と銘打って柳田國男の名著を一挙刊行しております。文庫版で,和装丁で感じが良く,何より廉価です。「日本の昔話」などは税込みで540円なのですよ。もちろん「遠野物語」も「妖怪談義」も「山の人生」などもあります。これはお勧めです。