例年,5月というのはこんなに暑かったですかね(笑)。私はというと,相変わらず特に朝は徒歩通勤を続けていますが,汗ばんでおります。徒歩通勤の経路はその日の気分次第で変わるのですが,今朝は中区丸の内のとある交差点の一角に設置された道しるべの存在に気づきました。その四角柱の形をした石造りの道しるべには,「東 ぜんこうじみち」,「南 あつた」,「西 みのじ」,「北 おしろ」と書いてありました。それを見たら何やらほのぼのとした気分になり,どこかへ旅にでも出かけたくなりました。「北 おしろ」というのはもちろん名古屋城のことを意味するのでしょうが,その場所からは歩いてもそんなに時間はかかりません。それに引き換え,「東 ぜんこうじみち」というのは長野の善光寺を意味するのでしょうが,これはあまりに遠すぎます(笑)。要するに,大ざっぱな方角が判れば良いのでしょうね。
旅行と言えば,昨年度中に日本へ来た外国人旅行者数が過去最高を記録しましたし,その勢いは本年度も続いています。財務省が発表した昨年度の国際収支統計によると,モノ以外の取引を示す「サービス収支」のうち,日本に来た外国人が買い物などで使った金額から,日本人が海外で使った金額を差し引いた「旅行収支」は2099億円の黒字になり,これは1959年以来55年ぶりの黒字ということです。円安などが影響しているのでしょうね。
円安という要因について言及しましたが,そういった為替変動という要因もさることながら,私が常日頃思っているのは,日本という国は本当に美しく,実はその美しさに加えて,後に述べる「おもてなし」の気持ちがあるからこそ外国人の旅行者,リピーターが増えているということです。私だって実は時間とお金さえあれば,まだまだもっともっと日本中,津々浦々旅行できたらなと思っています。国立公園,国定公園などの自然(山,川,湖,滝,森林などなど),神社・仏閣,遺跡,温泉,宿泊施設,都市部の洗練・・・。どれもこれも本当に美しいと思います。
ただ私がさらに思いますのには,実は外国人がこれだけ日本に訪れるのは,先に挙げたような観光資源の存在だけでなく,いわゆる「おもてなし」といった日本人の優しさも重要な観光資源だからだということです。
明治維新ころに活躍したイギリスの女流旅行家イザベラ・バードが日本を訪れた際の印象などを記録した「日本奥地紀行」などを読みますと,次のような記述があります。
「私はそれから奥地や北海道を一二〇〇マイルにわたって旅をしたが、まったく安全で、しかも心配もなかった。世界中で日本ほど、婦人が危険にも無作法な目にもあわず、まったく安全に旅行できる国はないと私は信じている。」
「ヨーロッパの多くの国々や、わがイギリスでも地方によっては、外国の服装をした女性の一人旅は、実際の危害を受けるまではゆかなくとも、無礼や侮辱の仕打ちにあったり、お金をゆすりとられるのであるが、ここでは私は、一度も失礼な目にあったこともなければ、真に過当な料金をとられた例もない。群衆にとり囲まれても、失礼なことをされることはない。」
「ほんの昨日のことであったが、革帯が一つ紛失していた。もう暗くなっていたが、その馬子はそれを探しに一里も戻った。彼にその骨折賃として何銭かあげようとしたが、彼は、旅の終りまで無事届けるのが当然の責任だ、と言って、どうしてもお金を受けとらなかった。」
こういった記述に触れるにつけ,日本という国やそこに住む日本人の有り様こそが,ずーっと前から外国人が旅行しやすい国であり続けた理由だと思った次第です。それこそが重要な観光資源の一つなのです。