「新選組紀行」(中村彰彦著,神長文夫写真,PHP文庫)という本を読み終えました。何故かしら新選組という存在に興味もありましてね(笑)。評論家の宮崎正弘さんが自分のブログ(サイト)の中で,新選組ゆかりの地をたどり,そして新選組そのものの勃興,最盛期,終末期を可能な限り史実に即して解説したものとしては「決定版」ではないかと勧めておられましたので,私も一読した次第です。
確かに,素晴らしい内容だったと思います。私自身も京都や福島(会津)へ実際に行き,新選組ゆかりの地を旅したことがありましたから,「ああ,そうだったなあ。」という感じで,合点のいった記述も多くありました。写真も多く掲載されています。
この本のブックカバーには,次のような記載がありました。
「数多くの映画やドラマ、小説になり、幕末激動の歴史を彩る『新選組』。しかし屈指の剣豪集団も、時代の流れには抗えなかった。本書は、新選組を描いて当代屈指の作家が、その結成から最盛期の活躍、やがて内部抗争を経て、時局の変転による敗退のすえに瓦解していく流れを、ゆかりの地を丹念に踏査して解説。新選組の全体像、時代のなかでの位置づけがよくわかる決定版。」とあります。
それにしても,新選組関係の書物を読みますと,やはり何か切なくなります。幕末動乱期にはもう既に鉄砲,大砲などの火器が主流であり,また時代の流れ(佐幕攘夷の方向ではなく尊皇攘夷,倒幕の方向)などからしますと,剣豪集団が次第に追い詰められていってしまうのであり,何とも切ないのでありますよ。
それでも新選組ファンは根強く世に存在します。著者の最終章での締めくくりの文章は,次のようなものでした。
「あれはいつのことだったか、私が別の用事で板橋に行ったついでにこの墓碑(新選組隊士供養塔のこと)を訪ねると、セーラー服姿の可愛らしい娘さんがその前を通りかかった。彼女はぴたりと歩みを止め、きちんと供養塔に一礼して去っていったものであった。小著が、私の記憶のなかにあるこの人のような新選組ファンの水先案内になってくれるとありがたい。」