産経新聞の書評を読んで,すぐに衝動買いしたのが「バカ田大学講義録なのだ!」(文藝春秋)という本です(笑)。早速読んでみましたが,こりゃ面白い。御用とお急ぎでなかったら,日々の仕事や家事に追われている手をちょっと休めて,一読されてはと思います。
この本の内容紹介には,「『天才バカボン』,『おそ松くん』などのギャグ漫画で知られる赤塚不二夫。その生誕80年を記念して,バカボンのパパの母校である『バカ田大学』を,なんと東京大学で開講!美術家,ミュージシャン,学者,作家,演出家,本物の東大教授などなど,豪華12組の講師による『赤塚不二夫スピリット』がビンビン伝わる熱い講義を一冊に。読んでリッパなバカになるのだ!」とあるように,私もリッパなバカに憧れます。そういう人に私もなりたい(笑)。
例えば,コラムニストの泉麻人は講師として冒頭に出てきますが,彼は「シェーとは何か?」というテーマで講義します。同じ世代の私も「少年サンデー」や「少年マガジン」を熟読しておりましたから,彼の講義内容は涙が出るほど懐かしいのです。イヤミが最初に「シェー」とやった時のこと,チビ太が最初に登場したのは彼が西部のガンマンの設定で,見事おたずね者を倒した御礼として何がいいかと聞かれて,おでんを要求したこと,デカパンやハタ坊の登場シーン,懐かしくて,懐かしくて,泣けてきました(笑)。1965年の年末ころには「シェー」の最盛期を迎え,あの長嶋茂雄さんもジョン・レノンもゴジラも「シェー」をしています。
この本にはイラストレーターのみうらじゅんも登場し,大人としてリッパなバカぶりを講義で披露しておりますが,「死んだあと、当然僕のようなやつは地獄に落ちるので、もう地獄のマップを入手しています。」として,入手したその地獄マップを披露していますが,そのマップによると,地獄にストーンと落とされてすぐの所に何と売店があるのです(笑)。
まあ面白いから一度読んでください。中でもとりわけ私が笑ってしまったのは,東京大学名誉教授の原島博先生の次のご発言です。
「・・・・・『これでいいのだ!』という言葉です。これは、僕が大好きな言葉です。基本的に『これでいいのだ!』は、居直っちゃえということですよね。今日だって、〝赤塚不二夫にものすごく詳しい人が来ている前で話をするなんて、どうしよう〟と思っていましたけど、『これでいいのだ!』,『居直れ』と思い直しました。『居直り』という言葉を定義すると、『咎めを受ける立場にありながら、図々しく振る舞うこと』です。まさに赤塚不二夫という人は、『人生、咎めを受けることばかりだったら、居直ったほうがいい』というのが基本的な考え方だったんだと思います。この言葉は、とくに僕のような70歳の老人にとっては、素晴らしい言葉です。居直りは『老人力』だと思っています。ヤバいことがあっても、少しだけ待ってもらって、死んでお詫びをすればいいわけですから(笑)。『死んでお詫びをします。でも少しだけ待ってください』、これが言えるのは、素晴らしい話ですよ。」
それにしても,赤塚不二夫さんと身近に接したことのある方々の話では,彼は本当に心根の優しい人だったようですね。また,娘さんの赤塚りえ子さんの話では,赤塚不二夫さんは,「ただバカっつったって、ホントのバカじゃダメなんだからな。知性とパイオニア精神にあふれたバカになんなきゃいけないの」とも仰っていたそうです。
肝に銘じます。
リオデジャネイロ・オリンピックも既に前半のかなりの部分が終了したと言えるのですかね。柔道にしても,水泳にしても,そして体操にしても,そしてその他の競技にしても,日本人選手団の素晴らしい活躍ぶりに,夏バテ気味の私も大いに元気をいただいております。
それにしても,柔道の競技を観ていてあらためて思うのは,日本の柔道の美しさです。それは技そのものの美しさだけでなく,礼節の美しさを含めてです。柔道という競技,試合の最近のオリンピックや世界選手権の状況を観ていて,私は実は柔道という競技は本当にこんなものだっかのかしらと疑問をもっていました。日本の柔道が本来持っている美しさが感じられなかったのです。それは外国人選手の中には,組み手争いであたかもボクシングのようなことをやっていたり,戦い方がモンゴル相撲のようであったり,腰を大きく後ろに引いた極端な防禦姿勢や偽装の「投げ」でたびたび指導を受けたり,今では禁止されているようですがやたらに足を取りにいったり(笑),切れ味鋭い技など全く影を潜め,時間稼ぎの明らかな優勢勝ち狙いだったり,さらには試合終了後の派手なガッツポーズなどを見せたり・・・・・などなど。
柔道という競技はこんなに美しくないものだったのかという疑問です。ついでに言うと,確かに白と青の柔道着は視覚的にも区別しやすく,外国人には受けが良いのでしょうが,やはり柔道着は白が良い(笑)。帯の色で区別すればよいのではないでしょうか。
しかし,このたびのリオデジャネイロ・オリンピックでの日本人柔道家の柔道を観ていまして,あらためて日本の柔道の美しさを感じました。誠に天晴れです。特に,男子73キロ級で金メダルを獲得した大野将平という柔道家には感心しました。内股,巴投げ,小外刈りなど非常に美しい見事な一本勝ちです。日本柔道の面目躍如です。やはりこういう柔道が観たい。彼は試合直後のインタビューでも,「柔道という競技のすばらしさ,強さ,美しさを見ている皆様に伝えられたと思います。」と「コメントしています。
それと,この大野将平という柔道家は,試合直後の畳の上では,まるでうれしくはないのかと思われるほど自分の感情を抑え,もちろん派手なガッツポーズなどもしませんでしたが,彼はその理由については次のように語っています。
「相手がいる対人競技なので,相手を敬おうと思っていました。冷静に綺麗な礼もできたのではないかと思います。日本の心を見せられる場でもあるので,よく気持ちを抑えられたと思います。」
これですよ,これ。これぞ日本柔道の真髄です。