今年の夏もあれほど暑くて閉口したのに,もう秋も深まり,朝晩はそこそこ冷え込むようになりましたね。早いものでもう11月に入りました。
新選組のことなど,私も幕末の歴史物に割と興味があるのですが,11月といいますと坂本龍馬や伊東甲子太郎が相次いで暗殺された事件を思い浮かべます。当時は尊王攘夷派,佐幕派など政情も社会も不安定な状況でした。坂本龍馬は慶応3年(1867年)11月15日に,また一度は新選組に籍を置き,その後袂を分かった高台寺党の領袖,伊東甲子太郎は同年11月18日にそれぞれ京都で暗殺されたのです。いずれも有意な人材であったことは間違いないでしょう。
さて,その新選組ですが,やはり当時の時代状況からすればもはや刀や鎗の時代ではなく,火器の時代になっていたのであり,哀しいかな彼らも滅びゆく運命でした。新選組には北辰一刀流,神道無念流,天然理心流などの免許皆伝,相当の手練れがいましたが,その僅か2か月後に勃発した戊辰戦争の戦況を見ても明らかなように,スナイドル銃や大砲などの火器には到底太刀打ちできないのです。悲哀を感じます。
また,沖田総司は新選組の中においてもその剣術の腕前を永倉新八や斉籐一らと争ったほどの凄腕でしたが,沖田総司ももうその頃には持病の結核の症状が悪化し,戦列には加わることができなくなっていました。若くして病死するのは無念だったでしょうが,火器の前には剣術も無力でしたから,戦場で失望し無力感を覚えるよりは良かったのかもしれません。
子母澤寛のいわゆる新選組三部作のうち,「新選組遺聞」(中公文庫)の中の「沖田総司房良」の章には,江戸・千駄ヶ谷の植木屋平五郎宅で病床にあった総司が死を迎えるまでの描写があります。先日の産経新聞の産経抄にも記載されていたのですが,この植木屋平五郎は総司をかくまい,その最期をみとった人物として新選組ファンにはよく知られております。
先日亡くなられた女優・江波杏子さんはその植木屋平五郎の玄孫(やしゃご)にあたる人です。往年の映画ファンにとって女優・江波杏子は,何と言っても賭博のつぼ振り師・昇り竜の「お銀」でしょう。
産経抄によりますと,昭和41年公開の「女の賭場」という映画では,もともとは若尾文子さんが主演するはずだったようですが,自宅の浴室でころんでケガをした若尾さんの代役で起用されたのが江波さんだそうです。ところがこれが大映のドル箱になり,江波さんもスターダムにのし上がります。76歳で亡くなる数日前までラジオドラマの収録に参加されていたようですが,とてもいい味を出していた女優さんですね。合掌。