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弁護士ブログ

2019/06/29

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ホントに,五代目古今亭志ん生という落語家は面白いし,とてつもない魅力がありますね。亡くなってからもう46年も経つのですが,CDでその高座の様子,語り口を聴いていても,未だにその芸は色あせることはありませんし,落語家といいますか,人間としての魅力も半端なものではありません。

 

筑摩書房という出版社からは「ちくま文庫」として,古今亭志ん生の半生記を記した「なめくじ艦隊」,「びんぼう自慢」などといった本があります。この2冊を立て続けに,そして食い入るように読み終わってしまいました(笑)。いずれの本も著者として古今亭志ん生の名がありますが,実際には古今亭志ん生その人に実際に取材して,志ん生が自ら口述した内容を記したもの,すなわち聞き書きをした半生記です。「なめくじ艦隊」の方は志ん生の愛弟子であった金原亭馬の助が聞き手であり,「びんぼう自慢」の方は小島貞二です。

 

自分の半生を語る古今亭志ん生の生き様を知るにつけ,些末なことでくよくよしたり,将来に不安を覚えたりしている自分がバカバカしくなってしまいます。自分も職業人である以上,努力を怠ってはなりませんし,人にいやな思いをさせてはなりませんが,結局人生ってのはなるようにしかならないのです。パーッと太く短くても良いから,楽しく過ごさなければね(笑)。志ん生なんかあんなに酒をくらっていたって,83歳まで元気だったんですから。

 

そして,志ん生の幼少期から大往生まで,その生き様を辿っていくと,私自身のこれからの人生のヒントになることもありますし,大いに勇気づけられることもあります。

 

幼い頃に奉公に出されるけれど,すぐに親元に帰ってきてしまい,親の言う事は聞かない。素行不良で尋常小学校卒業前に退学処分。12,3歳で酒とタバコを覚え,その後親元から離れて半ば勘当同然となり,親の死に目にもあえない。清水りんさんという女性と結婚するも,妻のりんさんが嫁入りに持ってきた着物類や調度類は数か月でなくなり(志ん生が質屋に入れる。),寄席での仕事がなくなってしまった期間は極貧生活のオンパレード。慣れない納豆売りをしても売れず,結局商品(納豆)は自家消費。子供にはひもじい思いをさせる(極貧で白いご飯が食べられず,大豆を一合買って来て,それを煎って食べさせたり,パンのふちの固いところを三銭で,そして砂糖を二銭で買って来て,それを付けて食べさせる・・・)。東京本所の業平の貧乏長屋では,地盤が湿地帯だったせいか,なめくじが無数に発生し,艦隊のように家の中の壁を這い回るし,これまた無数の蚊が発生し,「おう、いま、けえったよ・・・」と言ったとたんに,ワァッと蚊が2,30匹も口の中に飛び込んで来て,口がきけなくなる(家の中では蚊帳は絶対に必要)。

 

しかしながら,貧乏暮らしの志ん生も心機一転,芸道にまい進して噺家として不動の地位に上りつめる・・・。

 

落語に「替り目」という演目があります。酔っぱらった亭主がさんざん悪態をついて妻におでんを買いに行かせたが,実は常日頃心の底から妻に感謝しており,その本当の気持ちを酔って切々と独白する,しかし実際には妻はまだ出かけておらず,妻に全部聞かれてしまうというお話です。

 

亭主関白のように見える志ん生も,実は妻のおりんさんに甘え,頼り切っていました。おりんさんの内助がなかったとしたら,到底,志ん生はなかったに違いない。落語の「替り目」の夫婦が,つまり,志ん生夫婦の実像のようでもありました(「びんぼう自慢」316頁)。

 

我が家もそうかもしれません(笑)。

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