小惑星探査機「はやぶさ2」は,気の遠くなるような総移動距離約52億4000万キロの長旅を終え,見事に小惑星リュウグウの試料が入ったカプセルを地球にもたらしてくれました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術力の高さに感嘆し,その直向きな努力には頭が下がる思いです。
それにしても,難易度の高いミッションを見事にやり遂げ,休む間もなく新たな任務遂行のため小惑星1998KY26の探査に向けて,約100億キロの長旅へと旅立った「はやぶさ2」の存在には大きな感動を覚えます。私も歳のせいか涙もろくなり,どうしてもこの小惑星探知機を擬人化してしまうのです。そうです,2010年6月に我々を熱狂させ,感動させた「はやぶさ」と同様,その後続機であるこの「はやぶさ2」もやはり,まことの武士であったのです。
初号機であった「はやぶさ」は,大気圏に突入した後は自らは燃え尽きてしまい,探査成果物であるカプセルのみを見事に地球に帰還させました。その感動的な姿を見て,私は2010年6月15日のこのブログで「『はやぶさ』はまことの武士であった」という見出しの記事を書きました。あれから10年経ったのですね。
日本国,そして生みの親である宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対する忠義,自己犠牲を伴う任務遂行,散り際の潔さ,正に武士道精神そのものだと思ったのです。休む間もなく別の小惑星1998KY26の探査に向かった「はやぶさ2」も正に同様で,イオンエンジンの燃料の残量が約半分であり,これから約11年をかけて約100億キロを走行するのですから(到着予定は2031年7月),片道切符なのです。そうです,もう「はやぶさ2」が地球に帰還することはないのです。その散り際(去り際)の潔さ・・・。正に武士です。あっぱれです。
地球をつくる鉱物,海の水,生命の原材料物質は,太陽系初期には原始太陽系星雲の中で密接な関係を持っていたと考えられており,始原的な天体であるC型小惑星(リュウグウ)から採取したサンプルを分析し,太陽系空間にあった有機物や水がどのようなものであったのか,またどのように相互作用し共存してきたかを探ることで,生命の起源にも迫ることができると期待されています。このたびの「はやぶさ2」がもたらした探査成果物(試料,サンプル)が無駄にならないよう,そして所期の目的の一部でも果たされるよう願ってやみません。