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弁護士ブログ

2021/10/27

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秋も深まってまいりました。本来ならば絶好の旅行シーズンです。新型コロナウイルス感染のリスクも相当に低下しつつあるとはいっても,まだまだ心から旅行を楽しめる状況とは言い難いようです。

 

さて,私は常々思っているのですが,ビジネスチャンスとばかりに外国人旅行客を大量に招き入れ,ホテル・旅館・土産物屋さん・飲食店が外国人旅行客が消費してくれるお金に依存していく状況を非常に憂慮しております。コロナ禍が一応の収束状況を迎えた時,再び外国人旅行客が神社仏閣,城郭,その他の景勝地に大量に押し寄せて来てしまう状況はいかがなものかと思ってしまうのです。私などは,静謐を好み,日本的な風情や情緒を旅先でしみじみと味わいたいのですが,敢えて国は特定しませんが(皆さんも薄々お気づきのことと思いますが),マナーが極めて悪く,大声でしゃべくりまくり,喧騒を極めてしまうような外国人旅行客に囲まれたり,遭遇したりすると,せっかくの旅行先で興覚めをしてしまうのです。要するに,インバウンド歓迎の風潮によって,かえって本来旅行を静かに楽しみたい日本人観光客が逃げてしまうのではないかと懸念しています。最近では私も逃げているその一人なのです。

 

そうしたところ,少し前の産経新聞の「正論」というコラムでジェイソン・モーガン(麗澤大学准教授)さんが素晴らしい主張をされており,私はこれを読んで「我が意を得たり」と思いました。ちょっとその一部をご紹介しましょうか。

 

「日本文化は、街角に立って自分に注目を集めようとする文化だとは決して言えない。・・・どちらかというと、静けさや陰(かげ)、奥ゆかしさ、繊細さ、儚(はかな)さ、細かい感情に優れている文化だからだ。」

 

「(谷崎潤一郎の)『陰翳礼讃』を読むと、日本文化はやはり、日本人のためにあるものだと痛感する。・・・基本として日本文化は、日本を棲家にする人々が共有している貴重な『秘密』だと思う。出しゃばり過ぎると、その秘密が台なしになる。陰を光に晒(さら)すと、陰が消えるのは当然だろう。」

 

「(日本政府は)国内総生産のおよそ2%を占める外国人観光ビジネスをもっと加速したいと発表した。しかし日本文化を商品化するというスタンスは、短期的に利益があるかもしれないが、長期的に考えると日本文化を破壊すると警戒する。『日本文化をばら撒(ま)いて安く売る』のなら、結局のところ、税収アップにはなろうが、日本人のためにはならない。」

 

「こういう日本文化は、太陽の光で輝くものではなく、『陰翳』を大切にするものだから、政府などがこの文化をもってセールスポイントにすることがあまりにも不適切に感じる。」

 

「京都に外国人が押しかけ、どんちゃん騒ぎをするよりも、日本人が京都へ行って日本文化の中で充電して日本社会を大切にした方がはるかにいいと思う。」

 

・・・私はこのような主張を読んで,「何て素晴らしい,正鵠を射た発言だろう。」と感じました。まさに「我が意を得たり」です。本当に良いことを言うなあ(笑)。菅前首相のブレーンとされていて,観光戦略を助言し,訪日客3.8倍増の立役者とされているのがデービッド・アトキンソンという好感を持てない人物ですが,同じ欧米人でも日本文化に対する深度の違いは歴然としております。

 

私は改めて谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読み返してみましたが,深い味わいがありますし,「陰翳」を大切にする日本文化の本質というものを再確認しました。いくらインバウンドビジネスと言ったって,神社仏閣,城郭,その他の景勝地に行くのを日本人が避けるようになってはいけないのです。

2021/10/18

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土曜日(10月16日)には,巨人と広島のゲームがありました。3位巨人と4位広島とのゲーム差は4・・・。CS(クライマックス・シリーズ)進出をかけた重要な試合で,9連敗中の巨人がこの試合に負ければゲーム差は3に縮まりますし,引き分けをはさんで10連敗となります。

 

私はテレビでこのゲームを見ていました。私は長嶋茂雄さんが現役時代からずっと熱烈な巨人ファンであり,当然のことながらどの試合も巨人の勝利を願ってきましたが,正直に告白しますとこの時は巨人の敗北を願っておりました。こんなことは初めてのことです。

 

その理由は,新聞報道では今年で3年契約の最終年である原監督が来年度も巨人の指揮を執るということであり,1ファンとして失望したからです。つまり,この監督では来年度も期待できないので,いっそのことCS進出を逃すなどして球団が覚醒し,人事面での刷新を望んだからです。

 

読売ジャイアンツにあって,現状では原監督は全権を任され,好き放題の独裁者であるとの噂が絶えません。中4日(実質的には中3.5日の時もある),中5日のローテーションで投手を酷使して疲弊させ,「マシンガン継投」などと揶揄されているような中継ぎ投手の酷使,好悪の感情つまり好き嫌いによる選手起用,特に原監督が所望した中田翔選手の獲得と重用などなど・・・。選手の士気が低下しているのは明らかであり,結局私がひそかに望んだとおり,土曜日の広島戦にも負けて10連敗と相成りました。

 

実は8月のある時期まで,コーチとして極めて評価の高かった石井琢朗1軍野手総合コーチが突如としてベンチから外され,3軍コーチに追いやられました。石井琢朗コーチは広島やヤクルトでもその的確なコーチとしての仕事振りで実績を重ね,とても評価が高かったのであり,巨人の中にあっては唯一まともなコーチだったと思うのですが(笑),原監督がフロントの了解も取らずにこのような独断の不当人事を実行してしまったという報道もあります。

 

石井コーチは選手からの信頼も厚いため,このような「左遷」が選手の士気にも大いに影響したことは否定できないのではないでしょうか。そうすると,原監督の周りにいるのはイエスマンのコーチばかり。ヘッドコーチの元木さんなどは,以前バラエティー番組ではお馬鹿キャラで売っていましたし,投手総合コーチの宮本さんなどは,BSの通販番組に出ていますので,いわば両者ともタレントに毛が生えた程度です。V9時代の牧野茂ヘッドコーチのような実力ある知恵者でなければ,ヘッドコーチは務まりませんし,本来であれば投手出身の宮本コーチなどは,中4日,中5日のローテーションで投手を酷使して疲弊させている現状にはちゃんと異議を唱え,監督に諫言してしかるべきでしょう。

 

ある報道によりますと,コーチとしての良心に基づき,そしてチームのために敢えて監督に意見を述べた石井琢朗コーチは,原監督の逆鱗に触れて左遷されたということが言われております。もはや原監督は,天上天下唯我独尊の状態なのであり,自分の周りにはイエスマンしか置こうとしません。

 

一昨年,昨年の日本シリーズでの屈辱を私は忘れてはおりません。ソフトバンクに2年連続で0勝4敗,0勝4敗と1勝もできずに敗退したのですし,現在の10連敗を含め,ひょっとしたらCS進出も危ないなどといったチーム状態にした責任を,監督として潔く取るべきではないかと思うのです。

 

2021/10/05

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自民党総裁選も終わり,新内閣が発足しましたね。その総裁選の結果ですが,河野太郎氏が選出されなかったのは何より不幸中の幸いでした(笑)。くどいようですが,こういう人が日本国の首相になってはいけない。もっとも,実はかつては,あろうことか鳩山由紀夫や菅直人がそういう地位を占めたこともある訳ですから,連綿たる日本国の歴代宰相の歴史としてはもう失うものがないのですがね(笑)。

 

さて,恐るべき世論調査の結果からすれば,先の総裁選では党員・党友票で圧倒すると思われていた河野氏が第1回投票では1位になるのは確実と予想されていたのですが,ふたを開けてみたら2位に終わりました。さらに,河野氏は党所属国会議員票では高市早苗氏にも軽々と抜かれ,3位に甘んじました(86票に過ぎません)。下馬評とは大いに相違し,河野氏サイドとしては,さては投票の約束を取り付けていた人々にも一部裏切られてしまった,寝返られてしまったというのが実情かもしれません。

 

それにしても総裁選の投開票の翌日,9月30日付けの産経新聞「産経抄」の内容はとても面白いものでした。裏切り,寝返りという文脈で,菊池寛の「入れ札」という短編小説に言及していたのです。興味を持ったので,どんな小説なのか調べてみました。以下のとおりです。

 

代官を斬り殺した国定忠治は捕縛から逃れるために,上州・赤城山から榛名山を越えて,信州へ下っていくべき運命にありました。そう,「赤城の山も今宵かぎり」の国定忠治です。一行は親分の忠治を入れて12人。子分は11人ですが,全員連れて行く訳にはいかない。忠治としては,3人ほどの子分を連れ,その他の子分達にはそれなりのお金を与えて銘々思い通りに落ち延びさせてやりたかった。でも忠治としては,本当は共にしたい意中の子分(3名)はいたのだが,自分の口からはその名を言い出せない。子分達の意見を聞くうちに,忠治は「入れ札」という手段を思いついた。

 

その「入れ札」のルールは,本当に忠治(親分)の御供としてふさわしい子分の名1名をそれぞれ子分達に札に書かせ(自分の名を書いてはいけない),いわば自民党総裁選のように投票し(笑),札数の多い者から上位3人を連れて行くというもの。その方法を「やばいなー。いやだなー。」という気持ちで聞いていたのが,子分の中では古参,年長で第一の兄分とされていた稲荷の九郎助だった。彼は一応他の弟分からは「阿兄!(あにい)」と立てられてはいたものの,実際には人望がなく内心では軽んじられていたし,そのこと自体は九郎助も自覚していた。九郎助としては,やはり古顔の弥助からは「好意のある微笑」を投げかけられ,自分に1票投じてくれるとしたらこの弥助くらいかなと半ば諦めていた。でも自分のプライドを保つため,そして他のライバル(人望のある浅太郎)に対する嫉妬心から,思わず「くろすけ」と自分の名前を書いた(掟破りの自己投票)。

 

さて,いよいよ開票・・・。子分から入れられた11枚の札は,浅太郎に4枚,分別盛りの軍師・参謀格である喜蔵に4枚,怪力の嘉助に2枚,九郎助に1枚という結果だった。お供をする子分は忠治の意中どおり,浅太郎,喜蔵,嘉助に決定した。九郎助としては,「好意のある微笑」を投げかけた弥助の1票と自分で入れた1票で何とか選ばれることを期待したが,実際には弥助からも裏切られ,寝返られたのだ。その悔しさと自分で入れた後ろめたさや卑しさの気持ちでいたたまれなくなった。

 

忠治は3人の子分を連れて信州方面へと出発。その他の子分は銘々の方角へ。九郎助としては秩父の縁者を頼ることにしてトボトボと歩き始める。そうしたところ,あろうことか裏切った弥助が九郎助に同道を頼み,その道中,述べた言葉が九郎助を激怒させ,思わず殺意を覚えさせたが,九郎助はグッと我慢しなければならなかった。弥助は「親分があいつらを連れて行くのは納得できねえ。11人のうちでお前(九郎助)の名前を書いたのはこの弥助1人だと思うと、奴等の心根がわからねえ」と述べたのである。大嘘(笑)。

 

無記名投票なので(笑),九郎助としては弥助が九郎助に1票入れたと大嘘を言っていること,裏切ったことを暴くことができません。それを暴き,立証するには九郎助自身がルールを破って「くろすけ」と自分に1票を投じたことを告白するしかなく,それも自分の恥をさらすことになり,ますます惨めになってしまうからです。

 

菊池寛の「入れ札」はそんなお話でした。人間の弱さ,醜さを浮き彫りにしたどこか切ない作品です。

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