最近「AI監獄 ウイグル」(ジェフリー・ケイン著,濱野大道訳,新潮社)という本を読みました。そのちょっと前には,「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」(サイラグル・サウトバイ,アレクサンドラ・カヴェーリウス著,秋山勝訳,草思社)という本を読み終えてもおります。そして,ごく最近ではサイバー攻撃によるものとはいえ,中国当局によるウイグル人弾圧の動かぬ証拠のごく一部が流出しました。アメリカが「ジェノサイド」認定をしているように,中国当局のいう「職業訓練センター」や「再教育センター」は,やはり「強制収容所」であり,拷問,洗脳,強制的不妊手術などが展開されているという恐ろしい現実があります。
中国共産党はこれを「デマ」などといって否定していますが,これらの本の著者や登場する生き証人の詳細かつ具体的,迫真の証言は,体験した者でなければ供述できない極めて信用性の高いものです。
イギリスのBBC放送などはこのような中国共産党によるウイグル人に対する人権蹂躙,弾圧について敢然と報道し,時には放送中に中国大使をやり込めたりしていますが,日本のマスコミや野党議員などはなぜ詳しく報道しなかったり,声を上げたりしないのでしょうか。あれほど普段「人権」に敏感であるかのような報道,政治的言動をしているにもかかわらず・・・。不思議です。
「AI監獄 ウイグル」(ジェフリー・ケイン著,濱野大道訳,新潮社)という本に書かれている「強制収容所」体験者の供述によれば,新疆ウイグル自治区内では特に夥しい数のカメラが至る所に設置され,精巧な顔認証システムと中国共産党の命令に従う監視員による厳重な監視が徹底され,もうウイグル人のプライバシーも何もあったものではありません。悲惨,深刻の一語に尽きます。
この本のエピローグの部分の「ガス室を使わない集団虐殺(ジェノサイド)」という章には,次のような一節があります。
「ウイグル族の出生率は急激に下がっている、とメイセムは指摘した。20世紀の暴君たちが利用したような悪名高いやり方はもう必要なかった。ガス室や集団墓地に人々を送ることなく、ゆっくりと巧妙に人々を殲滅させる。それが、21世紀版の政府の戦略だとメイセムやほかの多くの研究者たちは考えた。新疆の当局は長年にわたって、ウイグル族やそのほかの少数民族の女性にたいし、避妊、中絶や不妊手術、子宮内避妊器具(IUD)挿入のための医療処置を強制してきた。いま、その政策の効果がはっきりと現われはじめていた。」
「2021年1月19日、アメリカ国務省は強制的な不妊手術を引き合いに出し、新疆ウイグル自治区の〝状況〟を集団虐殺(ジェノサイド)だと宣した。『このジェノサイドは現在も続いており、われわれは、中国の一党制がウイグル族を組織的に破壊しようとする試みを目の当たりにしているとわたしは考える』とマイク・ポンペオ国務長官は声明の中で主張した。『中国当局は脆弱な少数宗教民族の強制的な同化と最終的な抹消を進めている。』この『ジェノサイド』の指定はより厳しい制裁へとつながり、欧米社会からの中国の孤立をさらに深める可能性があった。」
「レイプの報道が出てからおよそ3週間後の2月22日、カナダの議会は拘束力のない動議を可決し、ウイグル族の扱いをジェノサイドと認定した。」
日本のマスコミはなぜ報道しないのでしょうかね。それに,岸田首相は人権担当の首相補佐官に中谷元防衛相を起用しましたね。彼は一体全体どんな仕事をしているのでしょうか。中国当局の「内政干渉」だという暴言を真に受けてシュンとしているのでしょうか。中国当局が日本の閣僚等の靖国神社参拝に抗議することこそ内政干渉だと思いますのに・・・。